国際的に注目されるべき力作
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本書は、ユネスコが主催する地域間哲学対話や、国連大学主催のグローバルセミナーの企画に携わってきた論者の「実践的な哲学書」である。4年前に出た『公共哲学とは何か』は新書であったため自ずと学術的な詰めがやや甘かったのに対し、本書は、「べき(規範)論」を機軸としつつ、「ある(現状分析)論」「できる(政策)論」の統合・協働による新たな学問的ヴィジョンを明確な仕方で展開している。新書での学問横断性の叙述に不満を覚えた読者は、緻密で深い学識に裏付けられた本書と対決してから、著者を批判するべきであろう。いずれにせよ、島国日本だけでしか通用しない夜郎自大的な流行思想が多い中、広義の哲学書である本書は、英訳されてもインパクトを与えるだけの水準と内容を有している。値段が高いのが欠点だが、激動するグローバル化の中で新しい知のあり方を模索している方々に是非一読を薦めたい。