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ボン書店の幻―モダニズム出版社の光と影 (ちくま文庫)

価格: ¥998
カテゴリ: 文庫
ブランド: 筑摩書房
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何年に一度会えるかどうかの名著 ★★★★★
TV番組で藤沢周氏が、「この本は名著です。」と語った一言で買った本ですが、読んでみて、その言葉通りと言うか、それ以上のものを受け取ったように思います。

著者が古書店主であると言うことだけでなく、内容も作家の評伝ではなく奥附に名を残すだけの出版者を追った作品であることに大いに興味を持ちました。

その謎に包まれた「鳥羽茂」と言う昭和初期のモダニズムに青春を賭けた人物の痕跡の断片を徐々に重ね合わせ、解き明かしてゆく文章に、知らず知らずのうちに引き込まれてゆきます。
十代でモダニズムの詩を書きながら、出版業に携わっていたこの人物の作品ともいえる書籍は、写真で見るだけでも、センスのある凝った作りであることが分かります。
しかも、そこから窺い知ることのできる彼の生活は、決して恵まれたものではなく、挙句の果てに夫婦共に結核に倒れ、28歳という短い人生を終えると言う下りに、神も仏もないのかという気持ちにさせられます。
モダニズムに賭けた彼の一生は、満足のゆくものだったのでしょうか。

本文を読み終えると、「文庫本のための少し長いあとがき」が続きます。
この文章が、「鳥羽茂」の追悼として最高のものです。
単行本が出版されてから十数年の歳月の後、作者は「鳥羽茂」の妹に出会うことが出来、息子にも出会います。
そこで語られることにより、「鳥羽茂」のその後の不明だった部分が明らかになります。
そして、最後に作者は「鳥羽茂」の終焉の地にまで足を運びます。
そこで描かれる祖母山を望む尾崎の地に立った作者の文章は温かく、「鳥羽茂」がそれなりに人生に満足して死んでいっただろうことを想像させます。
この「文庫本のための少し長いあとがき」を読むうち、目頭が熱くなりましたが、これは私だけではないと思います。

本当に何年に一度会えるかどうかの名著でした。
見えてくるのは昭和初期の爽やかな青春の姿 ★★★★★
 ごく素直に「いい本」といいたい本だ。
「ボン書店」という出版社をたった一人で経営し、優れたセンスとデザイン感覚の詩集を三十数冊出版した後、たった28歳で病死した鳥羽茂の足跡を、古書店の店主である著者が探っていった本である。
 本の「作者」のように注目されることはなく、たんに本の奥付に名は残すのみの「出版人」を、作者が愛情をもって探っていく姿がまず良い。そして、その結果見えてくるのは、昭和初期のモダニズムの詩が流行の最先端だった時代に、青春をモダニズム詩に賭けた、当時の最もトガっていた若者たちの姿だ。インターネットも、ラジオさえもなかった時代に、小さな印刷機だけを武器に田舎町から作品を全国に発信していた中学生(旧制)たちの姿。そしてそれを受信し、投稿という形で情熱を伝えあっていた姿。この時代の若者たちはこんなふうに夢を伝えあっていたのかとおもう。
 全体に貧乏な話でもあるのだが、不思議と暗い印象が無いのは、モダニズムというのが日本の文学史上空前絶後といっていいほどに爽やかな明るさを持った文学運動であったことと、そして鳥羽茂が決して営利を求めつつ失敗して貧乏だったわけではなく、採算を度外視して美しい本を作ろうとして貧乏な状態に陥っていた、その志の明るさを感じるからではないか。
鳥羽茂! ★★★★☆
昭和初期の本当に小さな、小さな出版社「ボン書店」。その実質1人だけの出版社の刊行人・鳥羽茂とはどんな人物だったのか。古書店を営む著者が様々な資料を基に、存命の方に話しを聞き、時に丁寧な推考を重ね、浮かび上がってくる出版社の心意気と覚悟を集約させた、刊行物。そこに込められたその心意気と覚悟が、青臭いと言われようともアマチュアリズムからしか醸し出せない尊い何かを感じさせるそれでいてプロの、仕事としている出版社、ボン書店。私個人は詩についての造詣が深いわけでも無く、ほぼ全員知らなかった詩人さんたちのことよりも、時に写真で出てくる(本当にここは無理してでもカラー写真にして欲しかった!)本のとても綺麗なことから、著者の、そして刊行人の仕事の質の高さを感じます。


「はじめに」という前書きで著者の内堀さんが言い表す、本を著者だけのものとしない、著者以外の、発刊に関わったすべての人々に対するやわらかですけれど、とても低くそして深いまなざしが印象的でした。書物の舞台裏の話し、それもとびきりの「伝説」と言える昭和初期の物語。文庫版のための少し長いあとがきで明かされる衝撃的最後の真実、もう一級品のノンフィクションです!


出版業界に生き、そこに全力を注ぎ、儚くも消えていっていった、まさに幻で、伝説の「ボン書店」に関する本です。いたずらに『幻の』とか『伝説の』という単語を使うことに抵抗ある私でも、その両方を使いたくさせる鳥羽さんの生涯を思うと、とても身が引き締まります。またきっと奥様の存在は大きかったと思います。文庫本のための長いあとがきで明かされる顛末に、悲しい思いを持ちました。


本以外の世界でも、おそらく多くの鳥羽さんの心意気を持った方がいたであろうことにも気づかされる、舞台裏でありながらも素晴らしい世界へ、興味のある方にオススメ致します。世界は表舞台だけで出来ているわけでは当然ですがありませんけれど、舞台裏の精神が、必ず表舞台に表れるものですから。
ナチュラリズムの真髄 ★★★★☆
本そのものが好きな思いをそのままに本を作り、書くことが好きなものが集まって活字を一つずつ拾って同人誌を作り、印刷所も作り、書店も作り、たおやかな時間を過ごしていた青年が昭和のはじめにいたのだという本当にあった話を、今、同じように本が好きな著者が丹念に丁寧にまとめあげたオマージュを、本好きな人間が、その空気に浸りながら読むというその時間の流れがこの本を分厚くさせている。今また、こんな書店が出来ていくのも一興であり、求められ、必要とされているのかも、とも思わせる。
内堀弘『ボン書店の幻』(ちくま文庫)を贈られて ★★★★★
担任を初めて持ちし生徒らの五十路半ばとなりにけるかも

髪長く額秀でし少年の古書店主となり知る人ぞ知る

<ボン>といふ書房つくりて三十路にも達せず逝きし詩人ありけり

鮮烈な詩本づくりに燃えつきし若者ありて<鳥羽茂>といふ
(鳥羽茂=とば・いかし)

専らに詩歌の古書を商ひつ教へ子追ひぬ<鳥羽茂>をば

教へ子の書きし好著に忘らるる詩人の生涯甦りけり

遺児さへも知らぬ生涯ほり起こし教へ子書きぬ詩人の紙碑を