戦争を知らない人間からすると異常だとしか思えない、当時の生や死に対する価値観や軍国思想。
この物語に登場する少年は、拒む理由がないまま流されて幼年学校に入学した、どこにでもいそうな普通の男の子です。そんな彼が厳しい訓練に明け暮れながらも次第に「軍人として」の自分を確立していく様がとても自然に描かれており、その純粋過ぎる想いに胸を打たれます。
徹底した「天皇崇拝」に傾倒していく彼の姿は、集団心理や洗脳などと言った言葉では到底言い表す事はできません。「理解できない」「異常だ」と決めつけて何も知ろうとしなかった自分に、糸口を与えてくれた貴重な作品です。