破壊のち再構築
★★★☆☆
いたって平凡なサラリーマンが、脆くも崩れてしまった世界の中で何かを守るために立ち上がる。
何か新しいものを創造するためには、等価値をもつものを破壊し、壊れたものを再構築することが求められるのでしょう。
「自分の力を過信して、転ぶんだ。でも、そこから先は、ふたつのパターンしかない。怖がって限界の中で折り合いをつけていくか、諦めずに限界以上のものを追い求めるか」
鈴木一さんと朴舜臣の師弟関係が良かった
★★★★☆
ゾンビーズシリーズ第2弾で、主人公は、鈴木一というサラリーマン。娘の遥が不良高校生に襲われ、刃物を手にして不良高校生がいる高校に乗り込もうとしたが、高校を間違えゾンビーズのいる高校に入ってしまった。その縁から、鈴木はゾンビーズの朴舜臣についてトレーニングをし、不良高校生を倒すため、体を鍛えるのである。鈴木の頑張りに対し、言葉数は少ないながらも、応え、支えている朴舜臣に対して、いい師弟関係だと思う。
やっていることはむちゃくちゃなんだろうが、最後はスカッとする終わり方で気持ちよかった。娘のために、最後まであきらめずに立ち向かっている姿はかっこいいなあと思う。こんなお父さんについて娘は幸せだと思うよ。
今回は、ゾンビーズの中でも朴舜臣だけがすごく際だっていた。
「真の勝者は鷹となって大空を羽ばたき、限りない自由へと近づく」
★★★★★
本書は直木賞受賞作『GO』の原作者・金城一紀が発表し、2005年7月9日に映画化(監督:成島出、主演:岡田准一、堤真一)公開された青春エンターテイメント小説である。
妻と娘を大切にしながらいたって平凡な人生を歩んできた47歳の中年サラリーマン・鈴木一。ある日、自分の大切な一人娘・遥がボクシングの高校チャンピオン・石原勇輔に乱暴された事で失意に陥り、復讐を試みた発端から奇妙な高校生のグループと知り合い、父親として大切なものを取り戻そうとする鈴木と彼に協力する高校生たちが過ごした一夏の物語である。
通常、乱暴された娘の復讐を晴らそうとする中年男の物語を設定すると陰惨な展開を印象づけるが、本書は読了後に一言“爽やか”以外に言葉が見つからない程、読後感として清々しい気持ちにさせる。まるで『ロッキー』を見ているような印象を与えるのだ。
登場人物も鈴木に闘い方を教えるために夏休みを費やして彼を鍛える在日朝鮮人の高校生・朴舜臣(パクスンシン)や鈴木に協力する高校生・南方、山下、板良敷、萱野といったグループ仲間たちが携帯電話を持たなくても互いに心が繋がりあう彼らの関係が心地よい。
また他にも、会社の上司で同期でもある藤田が事情を知り、留守中の鈴木の仕事は自分が預かるから目の前の事に専念しろという粋な計らいや帰宅途中で定時刻にいつも乗り降りするバスの運転手と同じ顔ぶれの乗客たちが、毎回バスと競争して距離を縮める鈴木に徐々に関心を示し、最後の日にベスト記録でゴールをした鈴木に感激して潤んだ目で親指をたててガッツポーズするバスの運転手や拍手を送る乗客たちにも心地よさを覚えた。
そして最後に鈴木一が父親として娘に呼びかける言葉〈メッセージ〉もよかった。
人間はいつからでも変われる!
★★★★★
7月9日から9月1日までの、平凡なサラリーマン、47歳の「ひと夏の冒険譚」。これはこの年齢の人たちに読んでもらいたいという本だった。高校生にやられ、高校生に励まされるという、おじさんの友情、熱血物語なのだ。著者が恐らく映画好きなのだろう、時に『灰とダイヤモンド』、『燃えよドラゴン』、『ロッキー』といった映画に触れており、それらへのオマージュともなっている。
主人公のおじさんを助ける高校生は、北海道、沖縄、在日というそれぞれの出身をすぐに分からせるような名前で、特に在日の生徒は自分の中の有り余ったエネルギーを上手に昇華させている。おじさんが最後に成し遂げたことは、彼らの助けなしには到底成しえないものだったし、こういう物語はやはり若いパワーがないと成り立たない。それに自分には起こり得なくても、高校生の頃、という誰しにも蘇る何ともいえない特別な時期を重ね合わせると、さもありなんという気がして、この物語をほほえましく捉えることが出来る。
いろんな意味で、人は見かけじゃ分からないもんだ、と当作品でも感じ入る。
この作品も面白かった!!
★★★★☆
金城一紀さんの作品はいつも元気を分けてもらえるものばかりですが、この作品も期待どおりでした。本をあまり読まない私も一気に読み切るほど退屈のしない内容でした。金城さんのファンならば必読です。