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シネマとジェンダー―アメリカ映画の性と戦争 (ビジュアル文化シリーズ)

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: 臨川書店
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ぐいぐい"読める! ★★★★★
著者は研究者だが、「読ませる」ことに心を砕いている「自己満足ではない」映画論。文章にスピードがあり、ドラマティックな筆致にぐいぐいと引き込まれた。映画論を読みたいけどフランス系思想・理論をベースとした論者たちのいまひとつ判然としない文体に馴染めない皆さん、ぜひどうぞ。「皆が知っている素材で勝負するからこそ、研究者の力量が問われ、それは極太の批評となる」という著者の信念から、誰もが知っている有名な映画を取り上げ、また映画理論ではなく映画の「精読」に重きを置いている。ここにこの本の成功の一因があると思われる。
新進気鋭の研究者による力作☆ ★★★★★
映画という現象は、第二次世界大戦から冷戦にいたるイデオ
ロギーと無関係では成立しえず、それでいて、独自の美学を維
持しようとするジャンルであり、その政治/美の緊張関係を読
み解こうとするのが本書の基本的な立場である。その意味で、
「映像の世紀」たる20世紀アメリカ現代史を投射しえており、
オルタナティヴな米文化史として読むこともできよう。

 ショットの転換やフレーミングの分析によって、ヒロインと
観客の視座が反転する様を描く第1章にはじまり、ヴェトナム
戦争を映像から隠蔽/開示された国家的トラウマとして据え、
『羊たちの沈黙』の身体性を分析する第5章にいたるまで、本
書に通底するのは、大衆娯楽の一ジャンルである映画を<見る
>という行為を、アカデミックな研究手法によって、高次元に
意識化しようという目論みである。映像に表れるものは、一体
何を意味するのか、あるいは逆に隠蔽されているものから、ど
のようなメッセージを受け取るべきなのか、これらの問いに丁
寧かつ大胆な分析によって迫っていく。

 著者がこだわるのは、あくまで「観客」の側からの<観る>
という娯楽=快楽を基本的な出発点としていることであろう。
そののち、映画学の確かな知識に裏打ちされた分析を経て、<
見る>という行為の意識化へと向かう。それは複層化された<
視座>と言い換えることもできよう。映画というジャンルに運
命的に備わるカメラワーク/観客という二重視点、あるいはロ
マンス・メロドラマ/欲望・暴力という二重性を前景化するこ
とによって、「大衆娯楽」が遠ざけてきたかに見えるジェンダ
ーと戦争のテーマを語り得る文法を用意してくれている。
 
 クラシックなものは苦手という方には、まず第1章を読んで
から『レベッカ』を観ると映画のリテラシーが上がっているこ
とが実感できる。また、これから映像文化研究を志そうという
学徒にとって、膨大な脚注と参考文献はきわめて有用な羅針盤
となるだろう。