長州の奇傑・高杉晋作
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「吉田松陰」を読み終わった後、すぐにこの本を読み始めました。海外に渡航する夢が破れてのちは、松下村塾で全魂込めて次代の人材を育成し、まさに、新時代の種を播いて逝かれた松陰先生の弟子・高杉晋作が、どのように生きたのか、どのように松陰先生の志を継いだのか、非常に気になったのです。
タイプ的には、松陰先生と晋作は全く違うタイプです。誠実で熱血・純朴な教育者タイプの松陰と、バイロンタイプとでもいうか、風雲児というか、鋭い頭脳と奔放な性格の晋作。しかし、その性格の激しさ・過激さは共通していました。感動的なのは、晋作の難しい性格を押さえ込んだり、変に矯めたりせず、慎重に尊重していく松陰の熱誠、そしてその師の気持ちを理解する晋作の、師弟心が通い合っている姿です。勿論いくら絆が強いと言ってもお互い、全てにおいて意見が一致するわけではないのですが、師弟して互いを労わり、思いやり合っているのが伝わってきます。
確かに1巻は松陰先生の様子が丁寧に描かれ、晋作は余り活躍しないように思われますが、これは「高杉晋作という人物は、吉田松陰という師の存在を十分語らずして語ることはできない」ということでもあるのではないでしょうか。司馬遼太郎さんの「世に棲む日々」にしてもが、どちらかだけではなくこの師弟2人の物語になっているのですし・・。実際この作中でも晋作は、松陰亡き後も常に師の思想を思い起こしています。
ともあれ、1巻は本当に序章なので、可能なら3冊一気に読むことをお勧めします。