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大山康晴の晩節

価格: ¥48
カテゴリ: 単行本
ブランド: 飛鳥新社
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確かにそこには大山の強さがあった ★★★★☆
将棋棋士、大山康晴。昭和の時代、棋界に君臨していた大名人である。
その巨人の強さを、同じ棋士である著者が一つ一つ解き明かしていく。

大山の強さを数字で証明するのは簡単だ。タイトル獲得数、勝率、A
級在位年数を並べて提示すれば良い。しかしそれは、流れのない止ま
った結果でしかない。結果だけでは、大山の強さには迫れない。

著者は晩年に注目した。確かにそこには大山の強さがあった。流れが
あった。

大山はA級棋士のまま亡くなった。憎らしいほど強かった。私は、あ
まりにも強い大山将棋に嫌気がさして、新聞の将棋欄を眺めることを
止めたことがある。

今、大山はいない。私は、たとえ少しの時間であったにせよ、あの強
さから目を背けていた自分を、もったいないと悔やんだ。
勝負師の人生 ★★★★★
不世出の大名人大山康晴の伝記を河口俊彦氏の記憶と主観と取材によって構成されているが、大山の有名な盤外戦術にはあまり触れず、盤上における総合的な強さ(手練手管の指し手、人間的な圧力、催眠術?)や、逆境に強い精神力や、大山の性格などが良く描かれている。
大山は決して人に好かれる性格ではなかったようだが、名人陥落後も会長としての責務を似ないながら、A級を保持し続けたのは本当に驚きの一言。既に棋士として全てを成し遂げたといっても過言ではない大山なだけに凄い。本当の将棋の鬼とはこの人なのではないだろうか。
人は上を目指しているときには頑張れるものだが、下り坂のときこそ踏ん張りどころ。
大山は数々の記録を打ち立てたが、大山の魅力は記録よりもこの負けない、折れない、精神にあると思った。その魅力を存分に描いた河口氏の文章には誠に敬服する。
この書が絶版になったのが惜しまれる。
「すごい」と思った ★★★★★
 将棋の世界を巧みな文章で描き出す著者であるが、この本を書くには20年かかったという。
 それは、棋士として大山康晴が偉大すぎたということはもちろんであるが、人間としてのスケールの大きさや独特の醸し出す雰囲気を文章として1冊の本に定着させるのが並大抵のことではないからだろう。

 著者は、その困難な課題に、年代順の伝記スタイルでもなく、差し手に偏ることもなく、いくつかの勝負やエピソードを効果的に構成することで、大山の姿を印象的に描き出している。
 私は、「棋士たちはこんな世界を生きているのか」と驚き、その中で大山康晴がどんな位置を占めていたかをたいへん興味深く読んだ。

 なお、本書は、将棋好きだけでなく、だれが読んでも引き込まれる好著。広く読まれるべき本と思います。

(参考)「あとがき」の記述
 本書の執筆にあたって悩んだのは、差し手と図面である。できることなら、将棋を知らない方を考えて差し手抜きで語りたかった。しかし、なにより大山は将棋の天才であり、差し手が人間をあらわしている。だから省くことはできなかった。
 そのかわり、差し手をできるだけ少なくし、その部分を飛ばして読んでも意が通じるよう工夫した。将棋を指せない方でも、大山という人間をわかっていただけると思う。
 
勝ち続けた人 ★★★★☆
大山康晴。
とにかく、あらゆる勝負事の世界に於いてこれほどまでに勝ち続けた人は
なかなかいないんじゃないでしょうか。
タイトル80期、通算1433勝、タイトル戦連続登場50回、順位戦A級
あるいは名人在籍連続44期。
どれもこれも絵空事のような記録ばかりです。

将棋界というのは勝利と敗北が極端に純粋化された世界なので、その中には
勝負事の機微がこれでもかというぐらいふんだんに詰まっています。
本書はそんな将棋界で勝ち続けた大山康晴の勝ち続けた理由を克明に書き綴
っていて、ビジネスや一般生活に応用できるかどうかは疑問ですがそういった
勝負の世界を描いた本としてはすばらしい出来だと思います。

内容としては、まるまる一章を若くして夭折した山田道美という棋士について
充てていますが、この章がまたすばらしい。
勝負の世界に生きる厳しさ、努力、悲運がその中に詰まっています。

多少作者の独特の勝負観というか、穿った見解が鼻につく部分もありますが、
読み物としてもよく出来ているので将棋ファンのみならず広い読者層に見て
もらいたい作品です。
いまの棋界で、見るからに「勝負師」という佇まいを持つ棋士はいるのだろうか。 ★★★★★
勿論、大山康晴への興味もあったが、それよりも傑作マンガ「月下の棋士」の原作者がどういう文章を書くのだろうかという興味で手に取った一冊。晩年の大山が残した棋譜を中心に、勝負師としての彼の姿を浮かび上がらせようとしているのだが、これが滅法おもしろい。

わたし自身はヘボにも満たないくらいの素人将棋なので、正直、大山の指した一手がどのくらい凄いのか、あるいは大山らしいのかは、まったくといっていい程理解できないのだが、それでも雰囲気が伝わってくるのは、著者の読みやすく分かりやすい文章のおかげだ。

わたしが大山康晴の対局をリアルタイムみた(もちろんTVだが)のは最晩年の数年間だけだったし、棋界のことなどまったく知らなかったので、60歳代でA級を維持することがどれ程凄いことなのかを知る由もなかったのだが、その「佇まい」だけは今でも強烈に印象に残っている。独特の風貌と相俟って別世界の人間に思えた。

今では、プロ棋士自体が別世界の人間ということは理解できるのだが、しかし、大山亡き後の棋士で、雰囲気だけで何事にも動ずることのない「勝負師」の佇まいを感じさせる人物は少ないように思える。渡辺竜王にその資質を見ることができるが、それでもまだ同時にガラスのような脆さも感じてしまう。

そんな大山の凄さを(元)棋士ならではの視点で解明しようとしたこの作品は、将棋を少しでも齧ったことのある人であれば充分楽しめる一冊だと思う。