イギリスのリスナーの耳が、アバ以降に登場した外国人アーティストたちの英語のアクセントを許容しておらず――EEC(欧州経済共同体)のマーケットに出回った星の数ほどのポップスのうち、イギリス人以外のヨーロッパ人が歌ったものは、本当にネーナの「99 Red Balloons」だけだったか?――シンセサイザーといえば奇妙なことに冷たくドイツ的なもの(モービルズ、ウルトラヴォックス、ニュー・オーダー)ばかりがもてはやされた時期にあって、プロパガンダに出番が回ってくるのに時間はかからなかった。メンバーの1人、金髪で冷たい感じのドイツ娘という、いかにもなキャラのクラウディア・ブルッケンは、まるで悪魔崇拝主義の死刑執行人みたいに冷徹な歌声を聴かせた。時代を超えた名曲「Duel」(1985年にUK21位のヒット)は、如才ないプロデューサー(言うまでもなく、時の人だったトレヴァー・ホーン)を得て、プロパガンダの入り組んだシンセ・ポップが極めつけの古典的なメロディーに到達した作品。「Jewel」は悲痛でピストンのようなリズムが特徴的なパンクっぽい曲だ。フランキー・ゴーズ・ハリウッドの場合と同様、当時最先端のレーベルだったZTTからヴィニール盤で出ていたさまざまなリミックスをそろえるためにはボックス・セットが必要となるが、『Outside World』は本格的なコレクションに先立って持っておくべきものであり、プロパガンダの初歩的なファンが知りたいと思うものをすべて教えてくれる。ディスクの形が銀色であしらわれたジャケットも粋だ。(Kevin Maidment, Amazon.co.uk)