読んだ後ホッとする
★★★★★
星野博美さんの本は「迷子の自由」が最初に読んだ本だ。
香港や東京での写真と共に感じたことがつづられている。
1枚1枚の写真から暖かくて優しくて、それでいて人生の無常観とかが漂ってくる本だった。
この「のりたまと煙突」は生とその向こう側、つまり死はただの薄い壁1枚で隔てられているだけ・・・そんなことを考えさせれた。
気持の在り方、精神こそはどこへでも自由に飛んで行けるんだよと。気の持ちようで人は豊かに人生を遅れるんではないかと。物質の豊かさでもない、あたたかな心で自分に素直に生きていけたらと、読後思いました。
小さく胸に響く極上エッセイかと
★★★★★
星野さんの本は他も読んでどれも好感を持ちましたがこのエッセイ集は特に気に入りました。流行りやイマドキな感覚にちょこっとづつひっかるような人はきっと共感できる、そんな文章だと思います。ちょっとした心情が素直にわかりやすい言葉で書かれていて誰にもよみやすいはずです。なんとなくアウトサイダーな感じのする著者なんですが、書いている内容はまともで常識的で胸にすっと落ちる内容です。様々な事に無頓着すぎる人間が多すぎる中で、色々な事にひっかかっている星野さんのような人の方が本当は一番まともで人間として信頼できるタイプの方なのかも知れません。
今年読んだエッセイの中でとりあえずこれが一番ベスト。
しみじみと…
★★★★★
恥ずかしながらこの文庫で初めて星野さんと出会いました。
最初はエッセイとも知らず、男性かと思って購入。
しかし性別は私と同じ女性、年齢が私より少し上なだけで近いこと、住んでいる場所も馴染みのある場所、猫が好き等、親近感が湧いたのもつかの間、読み進んでいくうちに「親近感」などを持ったのが失礼にあたるほど、星野さんの日常の一コマに対する想いが込められていると感じました。
星野さんの文章はわかりやすく、ページも短いもので3〜4ページ。
私が抱いていても文章に出来ない日常を簡潔に、ノスタルジックな思い出とともに綴られています。
ひとつ読むごとにいろいろと考えさせられ(ちっとも嫌じゃない)、星野さんの幼少の頃の思い入れが羨ましく感じ、懐かしく感じ、一緒に憤慨したり、共感したり、時に涙がこぼれそうになり、読み終えるのが惜しいと思いました。
人生のテーマをディープにえぐる"ライト"なエッセイ集
★★★★☆
ほのぼのしたり、ドキっとしたり、心にぐさっときたり・・・。そんな感動の連続でした。
読みやすいエッセイ集ですが、中身はとても深くて刺激的な本です。
本書は、作者独特の純粋な感性で現在と過去の身近な出来事を描写しながら、まっすぐな視線で「人生」を見つめています。というより「葛藤」している表現の方が適切かもしれません。
「転がる香港に苔は生えない」や「謝々チャイニーズ」を読んだことのある星野ファンなら、本書に裏切られることはないでしょう。1,850円はちょっと勇気が要る値段ですが、けっして高くないと思いました。
星野ファンでなくても、読み手のそれぞれの立場によって、いろいろな貴重なもの(違った見方、考え方、感動、・・・)を見つけられる本だと思いました。
あえて気になったことを書きますと、帯の表に「遠ざかる昭和---私たちは何を得て、何を失ったのか?」とありますが、これには違和感を感じました。私の読み方が間違っているかもしれませんが、作者にとっての本書のテーマは「記憶」ではないと思うのです。
同じ理由で、最終章の「よくばりな記憶---あとがきにかえて」にも違和感を感じました。これって、編集者が作者に無理に書かせたものじゃないだろうかと邪推してしまうような、取ってつけたような印象がありました(本当のところはわかりません。間違っていたらすみません)。
でも、こんなことは本書にとっては小さなことかもしれません。それくらい中身のある本だと思いました。
個人的には、星野さんはもっと注目されてもいいのになと思います。のんびりペースでもいいので、長く書き続けてほしいものです。
中年女性のふわっとしたエッセイ
★★★★☆
最後の節「よくばりな記憶ーあとがきにかえて」はそれまでの自然体
からちょっと力んだ文章になっていますが、作者の生き方考え方が表
れていて好きです。
作者は大の猫好きで、ぽつんと寂しげな人やおばあさんに関心があり
ます。文章から優しさ、親切さ、良識が伝わってきます。死にまつわ
る話も多いのですが懐かしさをこめて事実として受け止めています。
記憶力が良いのか、ある出来事をきっかけに思い出が糸をつむぐよう
に引っ張り出されます。
のりたまは「のり」「たま」という猫の名、煙突は銭湯の煙突。
癒し系の作品です。