ジューン・クリスティとピート・ルゴロ・オーケストラ。最高のコンビネーションなのは「サムシング・クール」でも証明済みですが、あちらが「夏」のイメージなら、こちらは「春」の雰囲気。それも春霞のかかった野の風情。
オープニングの「ザッツ・オール」からエリントンナンバー2曲に連なる、似通った曲調のスローバラード3曲並びが素晴らしい。ルゴロの豪奢な伴奏に乗ったジューンの歌声に、催眠術さながらまどろみに誘われます。
スインギーなナンバーも絶好調。セロニアス・モンクの「ラウンド・ミッドナイト」や、ラス・フリーマンの「ザ・ウインド」のようなブルージーなバラードもまたよし。
「メイビー・ユール・ビー・ゼア」「フォー・オール・ウィ・ノウ」の丁寧な歌唱に、単に「クール」に留まらないジューンのセンスが感じられます。
ルゴロの深みのあるアレンジにも耳を傾けたい、優雅でしゃれたアルバムです。