全体を通して、前のような壮大さ・芸術性・美しさが影をひそめ、不自然なソロと相まって一体感がない。　個々のプレーヤーは自分の仕事をしっかりとこなしているが、アクロポリスとトリビュートと比べて、全ての曲においてYANNI自身の作る編曲に重みがなく、POPS的な大衆的要素を感じる。　そしてメロディーが弱いのも残念。

派手なので一過性のフィーバーは感じられるが、聴き終わった後の心地よい余韻を感じる事はない。　何より”軽すぎる”のが最大のマイナスポイント。　これはオーケストラの存在感が薄い事に起因するように思う。

アクロポリスとダブる曲がいくつかあるが、基本的に全てクオリティが落ちていて、なぜあえて収録したのかを疑問に思う。　Until the Last Momentに関しては新しいアプローチを見せていて、以前はピアノメインだったのがバイオリンが半主役となっている。　これは哀愁があって良かったが、”音楽”の観点ではアクロポリスに軍配が上がる。

ところで会場の盛り上がり方は凄かった。　観客はYANNIが好きで好きで仕方が無いファンばかりのようで、トリビュートの中国公演に似た興奮がとても伝わってきた。　プレーヤーはみんないつも通り楽しそうに演奏しているので、会場の雰囲気は最高に良かった。　

そしてこのライブに日本人の女性が参加し、しかも活躍している事は大変嬉しい。　個人的な評価ではトリビュート＞アクロポリス＞＞・・・・＞＞本作ですが、ファンであればマストアイテムです。

このＤＶＤはコンサートと言うよりはラスベガスのショーです。　ですから見ていて楽しいのは確かですが、音楽を聴きたいのであればアクロポリスかトリビュートをお勧めします。　YANNI本来の主張のある、全く違う世界を発見できると思います。