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表象と批評――映画・アニメーション・漫画

価格: ¥2,940
カテゴリ: 単行本
ブランド: 岩波書店
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何とも刺激的な映画,アニメーション,漫画論 ★★★★★
映画論の序章ではヒチコックの「レベッカ」を題材に,テクスト分析の再定義を試みている。まえがきで著者の加藤は「映画的テクストとは情動と運動と音響をめぐる極度に複雑な言語化しがたい意味の織物の謂であり,テクスト分析とは一個のテクストの偶有性と個別性をすくいとる官能的読解のことである」と言う。では,「レベッカ」における偶有性とは具体的に何か。加藤は,ヒロインの三度の眩暈つまり落下感が,ヒロインと男の関係の開始,強化,危機という物語の結節点に照応していることであるとする。そして,加藤にとって再見のたびに新しい意味作用の発見と洞察に満たされている「レベッカ」を見事にテクスト分析して見せる。この序章でのテクスト分析の方法をもとに,映画論,アニメーション論,漫画論が展開される。
映画論の第1章ではホークスを中心として正反対の方向にあるゴダールとスピルバーグを取り上げ,歴史=スペクタクルと物語という観点で分析する。
第2章では,エドガー・G.ウルマーというB級映画作家を取り上げ,アメリカの映画史を語るには映画のジャンル論の語彙だけでは不十分で,そこにエクスプロイテイション,つまり,利用=搾取の概念を導入しなければならない理由を述べている。
そして,映画論の最後の章である第3章では,クリント・イーストウッドの諸作品を取り上げ,映画におけるジャンルの終焉を宣言する。
アニメーション論では新海誠というアニメーション作家の作品,中でも「秒速五センチメートル」を取り上げ,実写映画における風景と物語,アニメーションにおける風景の意味を解き明かしていく。実際,「秒速五センチメートル」のPVを観ると,風景の表現に比べると人物が如何に類型的表現であるか,人物よりも風景が主役であることが実感できる。
最後の漫画論では,第5章で,マニエリスム作家荒木飛呂彦の代表作「ジョジョの奇妙な冒険」を取り上げ,従来の漫画の枠組みでは理解不能なまでに,その駒割り,構図などが漫画テクストの限界に挑戦している意味を問う。
第6章では,漫画が時間芸術であることを意識していた石森章太郎をメインに取り上げ,漫画は時間芸術であり,一頁の漫画空間のためについやす時間は読み手一人一人の自由である故に極私的な時間が流れると主張する。
最後の第7章では,楳図かずおの恐怖漫画を取り上げ,公的領域から私的領域への移行が恐怖漫画の受容に拍車をかけたこと,楳図漫画の醍醐味は,プロミネンスを発するかのような瞳,驚愕の表情にあると言う。
何とも刺激的な内容であった。