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一日 夢の柵

価格: ¥1
カテゴリ: 単行本(ソフトカバー)
ブランド: 講談社
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ある意味、老後への希望の書 ★★★★☆
 “老後”ってどんなもんだろうなって年代になって、そういや文学に“老後”を映し出す作品ってないなぁと思ってたら、こんなドンピシャなのがあった。まだ俺は40代なんだけど、60、70になっても淫夢見るのか、なんて事すら知らない訳で。この短編集を通して漂う“もう社会の中心に今後なる可能性のない自分”って言うんでしょうか(もちろん若くても、社会の中心なんて意識は“セカチュー”みたいな欺瞞は別としてほとんどの人にないんだけど)、その老後とか老人って、割と見方がステレオタイプじゃない?でも、この短編集はそうじゃないんだよね。やっぱ、これまで生きてきた延長線上として“老後”ってのがあって、大半の人は死ぬ前に“老後”ってのを経験する訳だしね。この短編集読んでて、あまりにこれまで“老後”ってのがナチュラルに表現されてこなかったんだなって気がした。ここには老人からみた若者や社会に対する憤懣みたいなことだけじゃなくて、老人からみた同世代への反発、違和感とかもあるし、年齢とか性別みたいなクラスターでなんでも括っちゃうのはアバウトすぎるってのがわかる。あと、これ読んで怖いなぁと思うのは、もう取り返しのつかない夫婦の関係ね。お互い諦めきっているんだけど、時々ほとばしる「なんでこんなのと一緒になっちゃったんだろ」って悔恨ね。やっぱ時間って不可逆的なもんなんだよな。一方でこれ読んで良かったのはジジイになるのもそんな悪いことじゃないな、って思えること。状況的にはチンケだったりセコかったりイジイジしてたりする部分ももちろんあるんだけど、主人公が基本みんな楽観的っていうか、処世術身に付けているっていうか、たくましさ、飄々としたところが感じられて、微笑ましいっていうか心強いっていうか。現役よりはゆったり流れている時間っていうのも羨ましいし。ある意味、老後への希望の書ですな。十二編を執筆順に並べた構成も良かったです。