巨匠の全盛期
★★★★★
ミケランジェリは、周知のとおりその完璧主義的性格からほんの
少しでも自分が納得いかないときは、直前にコンサートをキャンセル
することが珍しくなく、逆にそれが評判を呼ぶという形で名声を博した。
また、ミケランジェリは録音嫌いで知られ、かれの演奏を録音した
CD(ライヴ録音を除く)は多くない。
そういった意味でもこの1973年のライヴ録音は貴重であり、
それが高音質で聞けることはありがたい。彼の演奏会のライヴ録音は
数多あれど、録音状態がよくないことが多い。
しかし、この録音は、文句なしに良い。
また、この演奏会では、後半にラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」、
「夜のガスパール」が入っているが、ミケランジェリの響きが高音質で
味わえるのが最高である。
「夜のガスパール」はいくつかライヴ録音があるが、これが最良の出来だと思う。
音質もさながら特に「スカルボ」は、
不気味な響きと、躍動感あふれるリズム感が絶妙なバランスで調和されている。
もちろん、前半のシューマンとショパンもミケランジェリらしく
すばらしい出来だ。
ミケランジェリファンならずとも少しでも彼の他の演奏
(ドビュッシーが多いと思うが。)を聞いたことのある人なら
ぜひとも買っておきたい一品である。
二枚組みだからこの値段は仕方がないだろう。