法然の信仰について、筆者本人の信仰心と重ね合わせて考え、語った本です。単純に「法然入門」としても読めますが、そういうものを期待するのなら、他の伝記にあたったほうが、より好ましいでしょう。はっきりいって、「無宗教」の人たちは近づかないほうがいいですよ。この信念の熱さは、伝わり様がないですから。これをよんだから「信じる」ようになる、ということは、たぶんないでしょう。すでに「信じて」いる人、もしくは、もしかしたら「信じるかも」という方々にだけ、この本を読んだいただきたい。
本書から伝わってくるように、法然上人は、まさにそういう「確信」の人でした。そして、おそらくそれをより「深く」ほりさげていったのが、この上巻の法然篇につづく下巻で紹介される親鸞上人です。いってみれば、下巻はもっと近寄りがたくなります。しかし、上巻を一挙に読み通せた読者には、さらに魅力的な世界が開かれています。信仰と救済の、確かな世界が。