文左衛門のサラリーマンとしての生活は月に3日、役所に出仕すればよいというもので、あまり現代とは比較にならないが、同僚が仕事上の不始末で簡単に自殺してしまうのには驚いた。どうも人の命は今よりかなり軽めであったようだ。
ゴシップやスキャンダルも多い。本書の半分以上は、密通、心中といった話である。奥さんの浮気に悩む夫も多く、女性はこの時代、さほど窮屈ではなかったようにも思う。日本人の性道徳の一端がうかがえて大変興味深い。
この本の面白いところは、平和になった江戸時代の武士の、あまりの情けなさや、乱れすぎな町人の風俗など、赤裸々に書かれているところです。酒ばかり飲んで、いつも吐いてばかりいる武士。剣術もちょっと習うとすぐ免許皆伝になってしまう。男女関係のだらしなさ。。
彼が生きていた時代はちょうど近松門左衛門の影響で心中がはやっていたり、生類憐みの令が出されたりしています。歴史的に大変有名な出来事が起きている時、実際はどうだったのか。非常に興味深く読めました。
ただ、文章ですが、解説がたくさんありますが、江戸時代の文ですので読むのにちょっと疲れました。解説といっても堅苦しいものではなく、読み物的に書かれています。