本書では、長州藩の本藩と支藩との対立、領民を巡る他藩との交渉、江戸駐在藩士の犯罪事件における町奉行との交渉、由井正雪の乱の藩内関係者の処分等々、同藩と幕府などとの間に生じる様々な「外交・政治」問題の顛末が、読みやすく描かれている。その後は留守居役の機能も形式的・儀礼的なものになったようだが、江戸前期のこの時代、幕府と各藩との関係は必ずしも、固まったものでなく、本書の主人公のような有能な留守居役の存在が極めて重要であったことがよく分かる。