初期の作品を11編
★★★★☆
収録作品は以下の通り。
「彦四郎実記」(昭和11年)
「浪人一代男」(昭和11年)
「牡丹花譜」(昭和13年)
「酔いどれ次郎八」(昭和13年)
「武道仮名暦」(昭和14年)
「烏」(昭和15年)
「与茂七の帰藩」(昭和15年)
「あらくれ武道」(昭和16年)
「江戸の土圭師」(昭和17年)
「風格」(昭和10年)
「人間紛失」(昭和12年)
本書は戦前に発表された初期の作品を収録する。いわゆる若書きの作品である。後年の傑作を知ると、周五郎も最初はこういう作品からスタートしたのだと感慨深いものがある。それでも「与茂七の帰藩」「江戸の土圭師」「浪人一代男」などは、物語運びの面白さがある。一方、「彦四郎実記」「牡丹花譜」などは型にはまった注文通りの作品という体裁をなしている。「風格」と「人間紛失」は現代物。就中、「人間紛失」は、いわゆる少女小説で、周五郎もこういう作品を書いた時期があるのかと実感させられる。周五郎の入門にはお勧めできないが、通勤時間など楽しむことは請け合える。