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ヨーロッパの乳房 (河出文庫)

価格: ¥599
カテゴリ: 文庫
ブランド: 河出書房新社
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澁澤龍彦ならこれ ★★★★★
澁澤龍彦前期を代表するのは『胡桃の中の世界』などの論文集で、後期は『唐草物語』『高岳親王~』などの小説群になるようだ。前期の論文形式のものは専門的で普通の読書にはややそぐわない印象をうける。かといって後期のものはフィクションになるので、それを読めばベースとなる知識やさらに内容がつまったものを読みたいという気になる。そこで私にとって澁澤龍彦の作品で好ましいのは紀行を中心とするエッセイ『ヨーロッパの乳房』ということになる。
訪欧時のエッセイではクラシックとバロックの概念に当てはまるものをまず芸術から分類していって、労働の一週間に対しては日曜日はバロックなのだ、という説明は面白くお洒落で詩情すら漂う印象をうけた。
また集中の「マージョーレ湖の姉妹」というエッセイタイトルは古い怪奇少女マンガを見るような風情でかなしげな余韻がある。この文の内容はけっこう平凡だが。

紀行もののほかは澁澤龍彦自身が直接垣間見られるようなエッセイが載せられている。それでいて不思議と内面をさらけだすような印象はなくて、書斎派ダンディの面目が躍如している。
そこで取り上げられる内容は死について、処女性について、ヒューマニズムについて。なかでも古い生物のウミユリやウミリンゴの長い時間と比べるとヒューマニズムなどはふけば飛ぶようなものに思えてくるという論の進め方は垢抜けしていて心憎い。また海や植物といったイメージも作者にふさわしいだろう。