インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

不滅の物語 (文学の冒険シリーズ)

価格: ¥2,243
カテゴリ: 単行本
ブランド: 国書刊行会
Amazon.co.jpで確認
7つの寓話集 ★★★★★
 デンマークの作家カーレン・ブリクセンがイサク・ディーネセンという男性名で発表した作品集。表題作を含む7つの不思議な寓話が収録されています。

 「不滅の物語」
 4人の登場人物がいます。物語を語った会計士のエリシャマ、エリシャマの雇い主にして物語を事実にしようと企てるミスター・クレイ、そしてクレイの操り人形として用いられる船乗りポールと高級娼婦ヴィルジニ。ミスター・クレイは事実しか認めず、実現していないし、実現しなかった物語の存在を認めようとせず、物語を実際にあるものにしようとします。しかし、その試みは結局、破滅への誘いでしかないのでしょう。プロデューサー・クレイの思惑に反して、物語は物語られず、語られたこととは異なることが起こる。それこそ真の物語ではないでしょうか。

 「満月の夜」
 亡き父の忌まわしい記憶に苦しむ若き領主のもとを、満月の夜、一人の老婆が訪れ、驚くべき話をするというもの。前半のウルリッケとの逢瀬を楽しむ明の部分と、間の老婆の話を挟んで後の死刑囚と話す暗の部分の対照をうまく描いています。風景描写も美しく、主人公アイテルとウルリッケのやり取りも美しい。

 「指輪」
 新婚夫婦、夫は羊を飼うのに余念がありません。妻は、そんな夫に少し辟易しながらも、愛情深く見守ります。途中、夫が病気の羊を見るのに時間がかかり、妻は
ゆっくりと家路につきます。そこで出会った羊泥棒との
やり取り。危険を知らないことの恐ろしさをよく物語っています。

 「カーネーションを胸に挿す若い男」
 新進気鋭の作家がホテルで、カーネーションを胸に挿した若者に出会ったことから起こる物語。何とも不思議な話です。日常性と非日常性の共存めいたところがおもしろい。

 「悲しみの畑」
 息子の無実を証明するため、約束の時間までに力を
尽くして畑の刈り取りをする母親の話。
タイトルからおおよその結末の予想はつきます。とはいえ、この寓意はあまりに重いと思います。

 「エコー」
 世界一の美声を失ったプリマドンナが、逃げていった
自らの声を探して世界中を彷徨う話。見失った声を見つけ、その声を鍛えるけれども、結局、それは完成しませんでした。ここにはどんな意味が込められているのでしょうか。人には許されぬ無礼を神には平気でやらかした者の歩みでしょうか。

 「女人像柱」
 地主階級に属する領主の奥方にまつわる日常を超越した不思議な話。日常的な世界がいつの間にか非日常の世界に移行する仕方は見事でした。