やはり特筆すべきは「漫画の神様」手塚治虫作品のパロディーだろう。絵柄を完璧にコピーして、一心不乱に下品さを追求する姿勢は、すがすがしいほど。たとえば、この作品。今にも息絶えようとする可憐な美女を抱き上げる男の頭には、彼女との思い出がフラッシュバックするが、思い出の中の彼女が話すことはといえば「男性器」のことのみ。これからその思い出だけを抱いて暮らすのはいやだとあせる男…。手塚作品で誰もが感じたひっそりとした「トラウマになるくらいエロい」(巻末の対談より)エロスを、ここまで見事に、単なるシモネタに作り変えることができるのはこの著者以外にいないだろう。
また絶対に見逃せないのが、カバー裏に収録されているカラー作品「神は天にいまし世はすべてこともないわきゃあない」。「三つ目がとおる」の「和登さん」や、ロック、ブラック・ジャック、サファイア、メルモ、そして「先生」本人までが登場して、ぞくぞくするほどばかばかしいやりとりを繰り広げている。手塚作品のパロディーではないが、形状も性質もそのものずばりのキャラクターが登場する「局部くん」シリーズも傑作。(門倉紫麻)