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ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」(ハース版)

価格: ¥1,800
カテゴリ: CD
ブランド: EMIミュージック・ジャパン
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   “録音された音楽”を完全否定し、生の演奏だけが本物の音楽であると主張し続けていた、ルーマニア生まれの孤高の大指揮者セルジュ・チェリビダッケ(1912-1996)。彼の最も得意とした作曲家がブルックナーである。その生前の演奏は、眼前に現れた神秘的な現象のように、1回1回が特別でかけがえがなく、聴き手の音楽観を根本から変えるほどの出来事であった。

   この《ロマンティック》は、1988年10月に行われた演奏会のライヴ。第1楽章も第4楽章も、強い終結の和音は必ず柔らかく余韻を残して終わる。随所にあるこの不思議なフェイント感はチェリビダッケ独自の理論によるもの。慣れない聴き手には違和感があるかもしれないが、好きになると完全にやみつきになる。すべてのフレーズをこれほど優しく心を込めて演奏する指揮者はいないのだ。響きは常に透明で澄み切っており、音程の正確さには無類のものがある。休符をたっぷりとり、次のフレーズに移りゆくたびにゆったりとした呼吸が聴き手の全身をひたしていく。

   晩年ミュンヘンに移ってからのチェリビダッケは、才気と精力に満ち溢れた壮年期とはまた違い、その芸境を深遠かつ巨大なものへと深めていった。特に好んで指揮したブルックナーでは演奏するたびに奇跡のように神々しい宇宙が現出した。冒頭のホルンだけでも別次元の世界へと誘われる第1楽章、胸も張り裂けんばかりの哀しみと敬虔さをたたえた第2楽章、どっしりとした安定した歩みがたまらない第3楽章、永遠に続くかと思えるほどの気が遠くなるクレッシェンドが終結部に待ち受けている第4楽章など、チェリビダッケ以外の誰にもなしえない至高のブルックナーがここにはある。(林田直樹)

娯楽を超えた宗教的儀式 ★★★★★
金管の澄みきった響きといい、細部までこだわった緻密さといい、とてもライブとは感じられない。時折ミストーンも聞き取れるがタマにキズ、少なくともドイツの某レーベルがよくやるリハを含めた“切り貼りライブ”ではなく、正真正銘“本番ライブ”の音源である事の証明であり、よくいわれるテンポの遅さも長年ベーム盤を愛聴してきた私には何ら違和感はない。むしろ1楽章の冒頭はチェリのほうが速いと感じられるぐらいだ。そして圧巻は終楽章のゴーダ。いつ果てるとも知れないクレッシェンドの息の長さは鳥肌が立つぐらいにゾクゾクとさせられ、自分の魂まで引き抜かれてそのまま昇天してしまうかのようだ。信仰深い作曲者の曲を細部まで掘り下げ再現すると音楽が娯楽の範疇を超え、ある種の“宗教的儀式”にまで昇華される。それをライブで成し遂げたチェリの芸術性の深さに脱帽せざるを得ない。“この演奏を聴かずに死ぬ人はお気の毒”と、どなたかがレビューされていたが全く同感で、逆にこの演奏に出会えた至福をかみしめ日々耳を傾ける今日この頃。しかし一番の果報者はやはり当日会場に足を運ばれ生でこのライブに接した方々であろう。誠に羨ましい限りと申す外ない。
天上からの視点 ★★★★★
 チェリビダッケの演奏には、全オケを威圧するような、叫び?唸り?…指揮者の声が録音されているところがおおい。チェリの発声の箇所こそが、その曲の気合のいれどころなのだ。ブル4の場合は、第2楽章でその声を聴くことができる。

 「ロマンティック」という副題を、噛み締める必要がある。ロマンチック【romantic】[形容動詞]現実を離れ、情緒的で甘美なさま。また、そのような事柄を好むさま。空想的。現実を離れることは確かにできる。

 提示される主題は、男女の恋愛における甘美さではなく、天上からの視点を観るようだ。近寄り難い。これこそ「クラシック音楽」の真髄だ。分かりやすいメロディーではなく。口ずさむには難しく。ただ、貴い高みに連れて行ってくれる。だから標題に惑わされ、彼の音楽に最初に接する曲としては、いきなり難易度は高いと思う。
美しい ★★★★★
美しい透明な音。音程がビシっと決まっているからこういう音が出るんだろう。
金管の3度、7度の響きに酔いそうになる。
ここに至るまでには、さぞかしオケのみなさんは、絞られたことだろう。

ゆったりした深い呼吸で、繊細なフレージング。この演奏が好きになると、
他の演奏は、せかせかと聴こえてしまう。
立派な曲だから、いろいろな演奏スタイルがあるとは思うが、自分はこれが一番好きだ。
だからクラッシックは面白い ★★★★☆
例にもれず、一つ一つの音符を丁寧に再現することにこだわったチェリビッケ節炸裂の遅いブル4です。ミュンヘンの金管控えめな演奏もすばらしく、多くの方がすでに指摘されているようにチェリビッケの世界にどっぷり浸れる1枚です。同じくスコアの再現に神経質にこだわったと言われてるWandのケルン響の4番(こっちは歯切れのよい4番)とくらべるとあたかも別の曲を聞いているのかと思うくらい異質です。ブルックナーの4番ではなくチェリビダッケの4番と呼んだほうが適切かもしれませんね。これはまたこれで歴史に残る名盤だと思います。だからクラッシックは面白いのでしょうね。Live recordingならではですが、当日風邪気味の方がマイク周囲にいらっしゃったようで、ここ一番聞かせどころの弱音部では咳き込む音がやや気になりました。
ブルックナーの真実 ★★★★★
此処にはブルックナーが信じていた「神」が確実に存在している。チェリは自分の音楽がレコードやCDでは伝わらないと生前はその発売を拒絶し続けていたが、それもまた眞であろう。併し演奏会に行けない人にとってはまさにチェリの演奏は垂涎のものであった。そして彼の死後、息子達によりチェリの演奏が正規に入手出来るようになったのである。朴訥なまでに謙虚で神を信じていたブルックナー。そして強烈な個性で指揮者でなかったならばルーマニアの大統領になっていたとまで言われるチェリ。そんな対極にいる両者が何故か不思議にマッチする。その典型がこのブルックナー4番なのである。この演奏で感動出来ない方はかわいそうである。確かにカラヤンのような演奏を好む方には明らかに不向きな演奏スタイルではある。しかし本当のブルックナーはこのチェリの解釈でしか表せない。第四楽章のはじめにまず驚かされそしてその終わりに我々は人類至宝の演奏を聴くことが出来る。この演奏を聴かずに死ぬ方は誠にお気の毒としか言いようがない。必ず聴くべし。