地理の教科書のような、あまりに無難な本
★★★☆☆
温泉地(地域)の再生をまとめた本。ビジネス書と言うより地域再生の本だから、内容が広くて浅い。
小さくて白黒だけど、写真や図表の資料が多く、内容は理解しやすい。内容のボリュームも程ほどでよかった。
NHKに出演した星野リゾートの社長が載っていた事もよかった。
本の作りが、お堅い・無難なイメージで、地理(社会科)の教科書かと思ったほど。
温泉調査のレポート・報告書で、あまりに無難すぎておもしろくなかった。資料のようで、
読む途中、退屈になってページを飛ばしてしまった。
値段の割に、大きな写真やカラーページが一つもないのが不満だ。
温泉地の資料としてならば問題はないが、地理の教科書のようで文章や構成がしっかりしている反面、
あまりに無難すぎておもしろみがない。良くも悪くもない本。
現代の温泉地関係者にとって必読の書
★★★★★
「温泉好きが多いという旅行者サイドの実態と受け入れ側の温泉地の実状、このギャップはいったい何を意味しているのか」と冒頭で問題提起するこの本は、多くのケ−ススタディで得た知恵や実際の行動のためのヒントを満載しており、現代のすべての温泉地関係者にとって必読の書と言えます。
著者は、「温泉地、温泉旅館にも明らかにコモディティ化が起きて」おり、「『温泉が好き』『温泉旅行に行きたい』という言葉の中にある温泉。表現は同じであってもその意味には変化が起きているのではないだろうか」、「温泉が温泉地と分けて考えられていることを温泉地サイドはもっと深刻にとらえる必要がある」と指摘した上で、今後の温泉地の方向性を例えば以下のように示しています。
■「今、温泉地は、新しい価値を創造し、現代的な存在意義を確立しなければならない時にきている」■「総合的に満足度の高い温泉地とは、その温泉地の個性・特徴がきちんと認知され、発揮できている温泉地」■「温泉地とは、気晴らし、ひと時の開放だけでなく、人生をより良くするための重要な価値をもった存在になるはず」なお、著者はそのケ−ススタディが示す成功事例の共通点として、「温泉とか温泉地とは何か、といった原点に立ち戻り、その魅力を改めて考えてみようとする動き」や「住民として誇れる温泉地とは何かを考え地域の一員としてその実現に向けた努力を進める動き」等を挙げていて、その他、この本には例えば以下のような興味深い指摘が満載されています。■「旅とは、違う文化を訪ねたい欲求」■「こころの豊かさを感じられるような観光」■「最近の観光では、地域の人の熱い思いやこだわりの心に共感したり魅せられて旅行する人が増えている」■「中核的空間としての広場」■「確実に、精神的なものに価値を見出す時代がやってきている。その精神的な豊かさの価値を気づかせる大きな可能性をもっているのが観光」
普通の温泉ファンにもオススメ
★★★★★
JTB主任研究員の久保田さんが、過去7年間にJTBの旅館ホテル向け機関誌に執筆した取材記の中から選び出した11ヵ所の温泉地の再生への取り組みの事例と、2007年9月以降に行なわれた各地のホテル経営者や地域のリーダーへのインタビューを中心にまとめたもの。
したがって、この単行本も業界向けビジネス書の様相を呈している。
だからテーマは温泉であっても、「いい旅夢気分」ではなく、「ガイアの夜明け」や「カンブリア宮殿」に近い本であるわけだ。
しかし、それらのTV番組を一般人が観てもおもしろいのと同様、業界の舞台裏を知ることで、ヘタな観光雑誌を読む以上に「この温泉行ってみたい!」という親近感がわく。
温泉再生にはビジネスのヒントが一杯つまっている
★★★★★
仕事で溜まった心と身体の疲れを癒しに、年に2−3回は温泉に出かけます。本書に取り上げられている別府温泉が私のお気に入りの一つで、元気にワイワイ・ガヤガヤと町おこしをされている起源や経緯を知りたくて本書を手に取りましたが、日本全国で自分の温泉地をもっと魅力的にして観光客に選ばれたい、と頑張っていらっしゃる方々が大勢いらっしゃることに、まず驚きました。そして、温泉地に暮らす人々や旅館・ホテルで働く人々が、観光客に誇れる温泉地・旅館・ホテルにしなければ、訪れた人々も心から楽しんではくれない、という共通の想いに胸を打たれました。また多くのリーダーたちの心の根底に流れているであろう、「作ることは残すこと」という発想には目からウロコでした。温泉地再生だけでなく、ビジネス書としても興味深く読める一冊ですね。