雑音にはふれずに、主に内容に絞って
★★★★★
ミレニアム問題として提示されて、すぐに解かれた最初の問題。
ポアンカレ予想を解くための理論を詳細に説明しています。
ポアンカレ予想をどうやって解くことができるかを掴めます。
数学に興味があれば、証明の展開について、道筋が分かります。
数学が専門でなくても、トポロジーという学問が、他の学問と協調して発展してきたことがわかります。
数学のすばらしさを教えてくれる本です。
なぜ、ベレルマンがフィールズ賞を受賞しないかについては、あまり書かれていません。
第15章に、ヤウから訂正記事を出すように要求が出たという紹介が、P306にあります。
フィールズ賞の受賞拒否については、「ポアンカレ予想」という本を参照するとよいかもしれません。
難しすぎます...
★★☆☆☆
サイモン・シンの「フェルマーの最終定理」に大感動したので、同じ感動を別の数学テーマで味わえないかと、この本を購入してみた。
「ポアンカレ」という名前は、小林秀雄を通じて、20年以上も前から気になる存在ではあった。しかし、日常の些事にまぎれて、岩波文庫から主要著書が翻訳されているにも関わらず、まだ一冊も読んでいない。肝心の「ポアンカレ予想」というのも、何を意味しているのか、いくつかの数学啓蒙書にあたってみたが、イマイチ、ピンとこない。
それで、本書には、そもそもの問題の理解、プラス、解いたという数学者の人間ドラマも併せて楽しめるのでは、と期待していたが…はっきりいって、単なる数学ファンには、この本は難しすぎる。最初の20〜30頁あたりで、もう頭が真っ白になり、一応、最後の頁までめくってみたが、ただ読みました、という感じで、なにも頭には残っていない。
肝心のペレルマンの人間ドラマも、勝手に期待していたほど頁が割かれていないし、欲求不満が残る。
はっきりいって、その人の数学の素養のレベルによって、本書の評価は大きく異なるのではないか? サイモン・シンの「フェルマーの最終定理」に感動して、「自分ってこんなに数学ができるんだ」などと勝手に自分を誤解している(私のような)読者は、痛い目に遭いますよ!
サイモン・シン好きな方に
★★★★★
サイモン・シンの「フェルマーの最終定理」は簡単ではないかとすら思える数式を、
証明するに当たり、いかに色々数学的概念が生み出されていったか。
及びその過程での、数学関係者たちの知的興奮を伝える良書であった。
それに比べるとオシアのこの書は、比較的淡々と書かれているように見える。
しかし、それは、ポアンカレ予想という問題自体が、フェルマー予想に比べ難しい概念であり
その難解さを、精一杯のテクニックを駆使して、一般の人に説明を試みた為だと思う。
オシアは文章のユーモアには欠けるが、少し大袈裟かもしれないが「科学の王道」を歩んで、
私たちを導いてくれたと思う。
フェルマー予想を解いた、ワイルズにサイモン・シン
ポアンカレ予想を解いた、ペレルマンにドナル・オシアがいたことは、
数学者にとってというより、世界の科学心を持つ人たちにとって、いかに幸運なことだったか
という思いで一杯になる。
(この二人がいなかったとしたら、私は数学の世紀のドラマを知らなかっただろう)
この本もまた、名著というべきだと思う。
ポアンカレ予想の解決までの流れがよく分かる
★★★★☆
NHKスペシャル「100年の難問はなぜ解けたのか〜天才数学者 失踪の謎〜」を見て本書を読むと,やや期待はずれになるかもしれません.TVが難問を解決したペレルマンの人間ドラマに焦点を当てているの対して,本書では解決までの数学の流れを丁寧に説明しています.
ただ,NHKの番組ではペレルマンの業績がトポロジーの研究の流れから外れたところに位置しているかの印象を受けたのですが,この本を読んで,そうではなく,微分幾何学と位相幾何学は互いに連携しながら発展してきたもので,ペレルマンの仕事はその延長にあることが分かりました.ドラマだけでなく,内容も知りたいという人にお勧めします.
次元を一つ落とせば簡単に分かるのだが・・・
★★★★☆
「世紀の大予想」の解決のお話。ポアンカレ予想とは「単連結な3次元閉多様体は3次元球面S^3に同相である」と言うことだそうな。1994年に証明されたもう一つの「世紀の大予想」フェルマー予想よりも分かりにくいが、これまた、「世紀の大予想」のリーマン予想よりは分かりやすいかな。一次元落として2次元にすると、言ってることはすぐ分かるのでイメージは作りやすい。
数学ついてはどうせ分からないし、本書にちりばめてあるイメージも分かったような分からないような・・・。多様体と宇宙の形の関係も、1次元落とした2次元多様体と地球の形の関係のアナロジーの方はすぐ分かるのだけど・・・・。一方、証明をめぐる人間模様はやはり面白く、特に最終的に証明したペレルマンは発表もちゃんとした論文誌にしていないし、フィールズ賞や賞金は辞退するし、謎に包まれている。それだけでも結構面白い。
もう一つ面白かったのは、学問の中心の移動と大学の盛衰の関係だ。ポアンカレを始めとするフランスから、クラインやヒルベルトのドイツへ、その後、アメリカへとポアンカレ予想研究の先端は移動して行く。そして、最後のペレルマンはロシア人。これは、ロシアの復権と言うより、学問の国際化を示すものなのだろう。その中で、フェルマー予想では大活躍だった日本人が出てこなかったのは残念だ。
数学に興味がある人にはお薦めの一冊である。って、興味のない人は手に取らんか・・・・