戦争中のアメリカ、イサカという架空の町に住むさまざまな登場人物が担う小さなエピソードの積み重ねで物語が形作られている。
とはいえひとつひとつのエピソード間の関連性に乏しく、全体のテンポや物語の流れ自体はよくない。一読すれば退屈さを感じるかもしれない。
しかし独特の台詞まわし、描かれる登場人物の神聖なまでの善良さは読後、ふしぎな味わいとして残る。
再読の欲求に応えるうち、かならずあなたのフェイバリットに数えられる作品になるはずだ。
特に電報局に若い強盗が押し入るエピソードの電報士と強盗のやりとりは感涙必至。
この世でもっとも優しい小説。それはもはや聖書以上だ。