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ウィリアム・サローヤン〈1〉わが心高原におーい、救けてくれ! (ハヤカワ演劇文庫)

価格: ¥756
カテゴリ: 単行本
ブランド: 早川書房
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貧しい庶民の暮らしや弱者の人生を哀感込めて描き上げる名匠の代表作戯曲集。 ★★★★☆
アメリカ・カリフォルニア州で新聞記者から転進し活躍した文学作家兼劇作家サローヤンの代表作2編を収める傑作戯曲集。著者の作風は貧しい庶民の暮らしや弱者の人生を静かに見守りながら苦しみ悲しみだけでなく滑稽な人間の可笑しさと未来への希望を感じさせる温かさを併せ持っています。真に味わい深い二編を読んで私が感じた点を以下に記します。
『わが心高原に』貧しい詩人の父子とラッパを吹く謎の老人と町の人々の心のふれあいを描く著者の名作短編を基に戯曲化された代表作。自称シェイクスピア俳優で美しい音色でラッパを吹くマッグレガア老人は幾ら周りの人達からもう無理だよと言われても認めずに自らの愛する芸事の世界を生涯貫いて喝采されながら天寿を全うする姿に惚れ惚れし誠に羨ましくもあります。九歳のジョオニイ少年は父親から食料品屋へツケで買い物にやられて恥ずかしい思いをしても決してめげずに気持ちを明るく持って生きて来ましたが、最後に施しを受けた事に反発し初めて悲しみが込み上げ泣きじゃくります。それでも結局は人の好意を無にしてはいけないと悟って思い直した事で大切な何かを得たと思います。そして著者の分身の様なアルメニア人の母を持ち女房と死に別れ九歳の子供と3人暮らしの貧しい一家の長である詩人の父ベンは売れない詩を書き続ける生活に行き詰まり遂に一家全員で借家を追い出される事となりますが著者は彼の向かう明確な行く末を明示していません。私は人生の危機なのだから妥協して家族の為に働いても良いだろうと思いますが、やはり頑固一徹の彼の事ですから、きっと老人を見習って自分の望む道を貫き通しどうにか逞しく生きて行く様な気がします。
『おーい、救けてくれ!』理不尽な不貞の罪で投獄された不幸な青年と牢屋の賄い人の少女に芽生えた幻の様な淡い恋を描きます。死を目前にしながら自分の不幸を嘆かずに唯娘の幸せを願う青年の優しさに心打たれます。
1939年4月初演とは・・・ ★★★★☆
一文なしの詩人父子とトリック・スターたる老役者を主人公とする心温まる戯曲。貧しくとも志高潔に生きることの大切さが静かに胸に沁みる佳作である。

それにしても、第二次世界大戦勃発(1939年9月)前のおそらく世情穏やかならざる時期に初演されたという事実は、(ある意味また現在はさておき)この時期の米国の文化的な優越性をすら感じさせるように思う。冒頭の「作者の言葉」で披瀝された作者サローヤンの自負心や愛国心もまたうべなるかなという気がしてならない。「私は、『わが心高原に』を一つの古典だと思っている」(17頁)。「私はアメリカのような場所はこの世にほかにはないと確信している」(14頁)。なお、初演時ジョオニイ役を演じたのは、あのシドニイ・ルメットであったことを、私は本書で初めて知った。