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ハロルド・ピンター (1) 温室/背信/家族の声(ハヤカワ演劇文庫 23)

価格: ¥1,134
カテゴリ: 文庫
ブランド: 早川書房
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『背信』は傑作ドラマ! ★★★★☆
 ハロルド・ピンター(1930-2008)は、イギリス演劇界の大御所だった劇作家で、晩年にはノーベル文学賞も受賞していますが、日本では知名度のわりにたいして読まれていないのではないか。

 本書は、かつて新潮社から出ていた全3巻の『ハロルド・ピンター全集』に収録されていない、後期戯曲集の貴重な文庫化です。興味がおありのかたは、絶版になるまえにぜひお求めを。

 収録された3つの作品は、それぞれの主題ごとに最もふさわしい方法を模索したうえで、知的に構想されている。読者はきっと、ピンターの演劇の多面性と緻密さを膚で感じることができるのではないかしら。

 なかでも『背信』(1978)は、掛値なしの傑作と呼んでいいだろう。評価は満点(あくまでも私の基準ですが)。中年の知識人の男女のあいだの、永年にわたる秘められた不倫関係の終わりから始まりにむかって時間をさかのぼっていく、そんな奇抜な構成が、心憎いまでに功を奏している。なんともはや皮肉な伏線の妙に、くりかえし唸った。研ぎ澄まされたディテールに神が宿っているなあ。いつか、練達の名優たちの演じる舞台で観てみたいものです。

 しかしながら、全体主義を諷刺した政治劇『温室』と、モノローグによるラジオドラマの短篇『家族の声』からは、あまりに観念的すぎる印象をうけて退屈したことを、正直に記しておきます。