2005年ノーベル文学賞受賞者ハロルド・ピンターの後期戯曲コレクション最終巻
★★★★☆
2005年にノーベル文学賞を受けたイギリスの劇作家ハロルド・ピンター(1930〜2008)の後期戯曲コレクション全3巻が完結した。本来ならば単行本で企画すべき出版だったという気はしますが、諸般の事情で、いきなり文庫版で発売されたようだ。出版不況の時代に、なにはともあれ快挙。めでたい。
第3巻には、『灰から灰へ』、『祝宴』、『失われた時を求めて』(プルースト原作、ダイ・トレヴィスとの共同による脚色)など、ピンター晩年の長短6つの作品を収録。喜志哲雄先生の訳で統一。そのうち、『声』と『それはそれとして』の2篇は、本国でもまだ書籍化されていない小品だとか。
あくまでも個人的な感想ですが、最終巻ということもあって、やはり落ち穂拾いといった印象は否めない。ピンターの特徴は如実にあらわれているものの、小粒なラインナップ。ディープな愛読者向けかもしれない。
これから鬼才ピンターの世界に親しんでみようとお考えのかたには、手始めに新潮社版『ハロルド・ピンター全集』からお薦めしておきたい。あなたが演劇好きならばぜひどうぞ。