「私は人が死ぬのが好きだ。どうだい、あんたは?」
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新潮社版『ハロルド・ピンター全集』に収録されていない後期戯曲を集めたハヤカワ演劇文庫版、第二弾。とにかく、パンチの効いた作品集です。20世紀の演劇に興味のあるかたには、おすすめできるでしょう。
前回の『ハロルド・ピンター(I)温室/背信/家族の声』も読みごたえがありましたが、こちらのほうが過激で怖ろしい。現代の病理を直視して、そこから逃げないで、お芝居にしてしまう。さすが。
たかが一幕物と侮ってはならない。政治と性。戦争の狂気。権力による人権弾圧。いやもう、世界の不条理に対する怒りとブラックユーモアが、そこかしこで炸裂している。こりゃ、すごいわ。読まされる側もけっこうきついですけどね。
全7作、多種多様。いかにもピンターらしい、知的な工夫が凝らしてある。特に「いわばアラスカ」「ヴィクトリア駅」「景気づけに一杯」の3篇の完成度が高いように感じられた。岸田今日子、杉浦直樹、矢崎滋らの出演でかつて上演された由。配役の妙。舞台を観たかったなあ。
ところで、複数の作品で、セリフに「おま*こ」ということばが飛びだすのは、いかがなものでしょうか。個人的には、日本語の語感として、不自然すぎて落ち着かないというか、かなり抵抗がありました。まあ、「きん*ま」とか「ゲロ野郎」とかはわりに平気なんですけど。役者さんが舞台で演じるとき、どうなんだろう?