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暴力論〈上〉 (岩波文庫)

価格: ¥882
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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自由な個人を夢見て ★★★★★
 ジョルジュ・ソレルの「暴力論」はムッソリーニに大きな感銘を与え、ボルシェヴィキのような社会主義運動にも多大な思想的影響を及ぼした名著である。本書のタイトル「暴力論」を見て、わかりやすい意味での暴力を想起する人も多いと思われるが、ソレルが言う暴力には二つある。一つは体制側つまりブルジョワジーが行使するフォルスとしての暴力、これは一般的に暴力装置としての国家が有するすべての作用を指す(例えば、法的拘束力の担保としての強制執行、本質的意味における軍事力など)。一方で、もう一つの暴力とはヴァイオランスとしての暴力である。この後者の暴力こそが、ソレルの主題としての暴力ということが出来るであろう。では、ヴァイオランスとは何か、それは訳者の解説にもあるように常に物理的な暴力を指すものではなく、生産者(ここで言う生産者とはおそらく自らの意志を持った労働者である。ソレルは生産者を創造性という観点から芸術家に類するものと見ていた)の意志から自然に湧きあがってくる生きることへの意志の発露であり、むしろ平和的な形での暴力である。具体的にソレルはゼネストをその代表例と見なしていた。
 このような暴力の捉え方にはニーチェやベルクソンの影響が見られるが、彼の思想の背後にある考えはおそらくより広い意味での労働者の解放に在ったように思われる。ソレルが上述の意味でのフォルスからの解放を重視し、既存の社会主義者から距離を置いたのは、ソレルが組織というものが存在する限り、労働者の解放が全く不可能であるという洞察を抱いていたためではないだろうか。結局のところ社会主義者が目指す革命は新たな主人を労働者に与えるだけであって、問題の解決には全くならないと彼は感じていたのではないだろうか。私はソレルの「暴力論」があらゆる種類の組織からの個人(労働者)の解放を意図して書かれたものではないかと考えている。このような考え方は、およそ労働貴族の存在を当然と見なす人から見れば、非現実的も甚だしいと言うことになるが、ソレルが「暴力論」において示した思想が非現実的で無用の長物であると言うことはできない。ソレルが現実主義者であったことからも理解されるように、彼自身も自らの思想の困難さを十分に理解していたはずである。私は、彼はファシストでもなく、社会主義者でもない、偉大な自由主義者だと主張したいのである。出来るだけ多くの人に偏見を持たず読んでもらいたい名著である。
暴力論というタイトルは ★★★★☆
木下半治氏による旧訳を引き継ぎ、タイトルはそのまま「暴力論」なわけなのだけ
ど、このタイトルはミスリードしやすいものだと思います。
この本は決して物理的暴力を賞賛し推奨するような内容ではないです。昔々旧訳を
読んだ際には、「暴力論」というタイトルからアナーキズムやブランキズムといっ
たイメージを抱いてしまい、テロリズムについての本だと予断を持って読み進めて
しまい、また木下氏の訳や解説もそういったことを喚起させるような感じだったこ
ともあり、結果よく理解できず読み終えてしまいました。
今回この新訳を手に取り読んでみると、そこらへんの誤解がクリアになっておりま
す。訳や解説もよいので、かなり明確に主旨がわかるようになってます。新訳を改
めて出版した甲斐があったというものです。

一言で言うと、この本はテロリズムについての本ではなくゼネストについての本で
す。本書で語られる「暴力」、つまりヴィオランスとは、フォルス(「強制力」と
約されてますが、いわば上からの権力ですね)との対比項として、プロレタリアー
トの反抗する力、体制を覆そうとする力のことを指します。文中かなりメタフィ
ジックな使い方をされてますので注意を。また、ベンヤミンもこの本にインスパイ
アされて本を書いてるのでそちらのほうも参照してほしいです。