施設を知りたい人、読む価値あり
★★★★★
施設での暮らしを経験した子どもが手記で語る。
子どもが書いた文章なので、決して上手であるとはいえないものもあるが、
経験を元に記されており、子どもの生の声がダイレクトに
伝わってくる感じは十分にある。
児童福祉施設について知りたい、と思っていたが
内容も平易であるので児童福祉施設の概要を知る入門としても
活用できるであろう。
門限が厳しい、おこづかいが少ないといった制限はあり、
言われてみればそうだなぁ、と感じる。
おこづかいがいくら、門限が何時と間具体的にあり、
実に現実的である。
しかし、国(都道府県)の福祉政策では精一杯なのであろう。
福祉政策にお金を必要することも分かるが、
親が子どもを手放すようなことが起こらないよう、対策を講じることも
また必要ではないだろうか、と感じた。
職員に不満を抱く子どもも多い。
もともと、職員が労働基準法に照らし合わせて働いているので
それ以上のものを求められれば職員のボランティア精神が頼みになる。
子どもは、そういった側面からもちろん物事を考えるはずがないが、
職員がもう少し余裕をもって働けるようになるとまた変わるのかもしれない、
と感じた。
「核心を突かれたときに魂が響きあう」
★★★★★
養護施設で暮らしたこどもたちが、同じ体験をもつなかまと
「東京地区高校生交流会」で語り合った内容が述べられている。
ここにあるのは人としての本音、こころの叫びのように聴こえる。
父とは、母とは、家庭とは、子とは、人とは、人生とは、生きるとは、
彼ら、彼女らの言葉から自らに問い直すことができる。
とにかく耳を傾けてみたい。
出版社へ敬意を表します
★★★★☆
施設の暮らしを知らぬ訳でもない私が(職員としてであり、養護施設ではないが)、このような書籍が出版されており、そこに思春期、青年期特有の率直な心情の吐露と感情の揺れが表現されていることに驚かされた。全体的に感じるのは、自分の感情が未整理で(年齢的に無理もないが)、退所後に強い心的な刺激があるとPTSDを発症させる可能性があると予想されるこどもたちが多いということである。このような対応は、専門家でなければ不可能であるが、もし退所後のケアができる施設であれば、子どもたちが書いていたように、話を聞き、受容していただきたい。それだけでも、子ども達はどれほど救われるだろうか。施設に就職しようと考えている若者に読んで欲しい本である。