チェット・ベイカーといえば、バリトン・サックスのジェリー・マリガンと組んだピアノレス・クァルテットが有名だが、その後、53年にピアノのラス・フリーマンを加えて結成した自身のクァルテットも素晴らしい。同年のダウンビート誌の読者人気投票で、チェットはトランペット部門の1位に選出された。この時点では人気はもちろん、実力でもチェットはマイルスを凌ぐ実力者だったのである。
フリーマンを含む53年のクァルテット・セッションは、かつて『クール・ベイカーVol.1』『同 Vol.2』というタイトルで発売されたこともある。しかし、歴史的なマリガンとのピアノレス・クァルテットと『シングス』に代表されるヴォーカル作品の中間に位置する時期とあって、内容の素晴らしさに比べ、注目度はいまひとつだった。それゆえ、フリーマンとの53年のセッションをそっくり収録した本作は絶大な価値がある。しかも曲によっては、10インチ・バージョンと12インチ・バージョンの両方が収録され、一部別テイクも加えられているのだ。ずばり、センス抜群のウエスト・コースト・ジャズ。(市川正二)
初期のチェット・ベイカー
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和田誠・村上春樹の「ポートレイト・イン・ジャズ」を読んで、そこで紹介されていた「Chet Baker Quartet」を聴きたくなったが、同様のものは探しても見当たらなかった。しかし、そのアルバムの殆どの曲が収録されているのがこのアルバムである。同じテイクなのかどうかは分からないが、最初期のベイカーのクァルテットが聴きたかった私にとってこの一枚はぴったりでした。
ベイカーの代表的名盤
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チェットといえば気色の悪いボーカル(ファンには失礼!)で有名だが、50年代初めに西海岸でフリーマンと共に録音したこれらの作品は、21.を頂点とする彼の輝かしい絶頂期を代表するものといって良い。
チェット・ベイカーのアルバムでまず第一に挙げるものとしては、本作を最右翼におくべきで、次に推薦に値するのがマリガン・カルテットでの演奏、ということになろう。
アート・ペッパーといいチェットといい、50年代の西海岸には優れたインプロバイザーがいたのである。
アットホームなクヮルテット、影の重役ラス・フリーマン
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~自分が実際にトランペットを手にし、ジャズ(もどき)を演奏するようになって、チェット・ベイカーの音はなんて湿っぽく魅力的なんだろうと感じるようになった。自分にとって今も最も尊敬するトランペット吹きは、彼である。
チェット・ベイカーの作品は、ビッグバンドなどを除いては、どれもこれもアットホームな雰囲気がある。彼は、彼を取り巻く連中と~~、そんなにも仲良しだったんだろうか。湿っぽく暖かい音は、言わずと知れたチェットのトランペットの特徴であるが、このラス・フリーマンとのアルバムでもその期待は裏切られず、アットホームなクヮルテットを展開している。
どこでアットホームさを感じるかというと、曲の始まり(イントロ)や終わり方(エンディング)である。そもそもレコーディングであ~~るから、この2点だけでも、ある程度は決めて演奏しているはずだ。それなのに、例えば4曲目 'Maid In Mexico'~~~~ のエンディングでは、なだれ込むように締めくくっている。それでもよしとしている、うまくいっちゃあっているのだ。一体、何であろうか。
息がぴったりですね、なんて言ったら間違いなく皮肉なのだが、それ以前の部分で彼らは理解し合っているのだろう。としか思えない‥。
オススメは 'Isn't Is Romantic?'、'Maid In Mexico'、'Long Ago And Far Away (12inch LP take)'、'All~~ The~~ Things You Are'、'Winter Wonderland (78 take)'。
Maid In MexicoはRuss Freemanオリジナル、Winter Wonderlandは2003年スターバックスクリスマスコンピに収録(バージョン不明)。
スタンダードとオリジナルを織り交ぜながらの25曲は、テイク違いも揃えて、マニアも満足といったところだ。~