トルコの多民族国家の実像を解説、友達、知人が多いため説得力あり
★★★★☆
トルコ人とは何か、という実に分かりにくい問題について、日本で最もトルコ事情に通じていると思われる著者によるレポート。
実はトルコ語は日本語に良く似ているらしい。人種的にも近いという説も、昔にはあった。しかし、イスタンブールのトルコ人には金髪碧眼の人もいて、旅行者には欧州人のように見える。
著者には、トルコの庶民に知り合い、友人が多いため、人種的には多民族の混血であるトルコ人について(宗教は必ずしも全員がイスラムではないが、トルコ語はおおむね話す人たち)、自らの経験を交えつつ、多民族が暮らす国、街とはどういうものなのか、負の歴史についても触れつつ、自分の目で観察している。
トルコは、今でも多くの少数民族を抱えており、有名なところでは、ギリシャ人、アルメニア人がいる(しかし彼らの国家とは関係は険悪だ)。クルド人問題というのもある。更に、アラブ人やユダヤ人、中国のウィグル人、アゼルバイジャン人、ボスニア人、ブルガリア人など、多くの民族がトルコ語を話しトルコ国籍を持ち、トルコ人としての自覚を持って暮らしているらしい。恐らく、アメリカ人が、ぼくはドイツ系とか中国系というのと同じ意味で、ぼくはアラブ系(トルコ人)、アルバニア系などと称しているらしい、ということが良くわかる。
顔つきも、白人からまるで日本人みたいな人たちまでいるというのだから、興味深い。
クルド人問題についての著者の見方については、一部の専門家には異論があるかもしれないが、トルコを知るには非常に有益な本だと思う。