ラストが少々唐突に終わるかなと思うのだが、これが不思議と余韻を残す。彼はこうなりました、二人は幸せになりましたとさ、と説明がないほうが、読者に想像力を働かす要因になるようだ。
表題作「背中の髑髏」は、しがない鋳掛屋が幼い息子にせがまれて、背中に「髑髏を抱く尼御前」の絵柄を彫ったことから、恐ろしい事件に巻き込まれる話。映画「羊たちの沈黙」みたいだなー。
「相続人」は、ある小間物屋の小僧に対する、その父親である番頭の度を超した仕打ちに、源十郎が疑念を抱くことから始まる。
「因業の瀧」は、借金で身代をつぶし、女房と心中を図り、辛くも生き残った饅頭屋の主が、町人の身分を剥奪され晒し者にされる。晒しの場で、遠くから彼を見つめる曰くありげな女に、菊太郎が目をつける。この女は、男とかつて恋仲で、貧乏人だからと結婚を男の親から認めてもらえなかったのだ・・。切ない話で、彼らが最後に選択した償いが、胸に迫る。
鯉屋の奉公人たち、菊太郎・鐵蔵兄弟の会話が、まるでホームドラマのようで笑える。