ある意味、問題作
★★★★☆
スラーについては、バッハの頃の楽譜の多くは現在の楽譜のように厳密にスラーが書き込まれておらず、当時は誰でもが知っていた演奏習慣に従って弾かれていた。ところが、当時の演奏習慣を知っている人はもはやいない(当たり前)。よって、この版のスラーは、他の版と同様、校訂者の解釈によっているわけだけれど、それが現在まで多くのチェリストが弾いてきたものとはかなり違う。ただし、順次進行はスラーで、跳躍進行は切ってという、文献からわかる当時の演奏方法をかなり取り入れた、興味深い版である。ただし、(繰り返すが)現実に一般的に演奏されているのとは違うところが多いのも事実。
また、指使いも、ジャンドロン自身が書いているように「誰にでも可能な」ことを前提に書き込まれている。実際、手の大きさや各指の長さは個人差があるので、指使いは人によって異なるのは当然。
結局のところ、スラーも指使いも、演奏する人が批判的に見て、最終的には自ら決めるべきで、そのことも序文にきちんと明記されているのはきわめて真摯な態度であるといえる。
もし特定の先生に習っていて、その先生が「自分の方法」に固執するよう人であるなら、スラーも指使いもほとんど書きなおされる可能性が高い。したがって、そのような先生に付いている人と、特定の版の内容をそのまま自分に適用しようとする人には不向き。よって、この版はきわめて価値が高いけれど、誰にでも勧められるものではない、ということになり、星四つ。
指番号は、参考程度に
★★★☆☆
この楽譜を使って、No.1〜No.4まで弾いた。
私が習っていた先生いわく、「ジャンドロンめぇ〜」と、しかめっ面になってしまった。
挙句の果てには、楽譜が真っ黒け。
楽譜の通りには、弾いた試しがない。
そんなこんなで、著者の弾き方には、一癖あることを理解していただきたい。
バランスよし!
★★★★★
愛用している楽譜のひとつだ。
運指法やボーイングなども自然であり、
かつ値段的にもバランスがとれ、優れている。
第五番プレリュードは二通りの楽譜が用意されている。
まずはこちらを一冊、是非入手したい。
J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲
★★★★★
筆者はチェリストでもあり、しかも学究的に研究した成果がこの楽譜に結集されている。バッハの「無伴奏チェロ組曲」は原譜は存在しなく、アンナ・マグダレーナの手になるものが存在しているだけである。それをアウグスト・ヴェンツインガー譜を忠実に研究し、スラーや運指を丁寧につけて、可能な限り演奏しやすく工夫されている。中級レベルの人に最適の教則本である。楽譜もとても見やすくなっている。原曲の演奏法にとても近いのではないかと思える。まえがきの筆者の考え方も大いに参考になる。是非推薦したい楽譜である。
チェロ弾きなら基本中の基本
★★★★☆
チェロ弾きならば一冊はほしい「バッハの無伴奏」ですが、いろんな版があるので実際に購入する際には悩ましいところですね。一冊だけ選ぶならば、迷わずこれがおすすめです。指使いや弓使いも自然だし、なによりも注釈についての日本語訳がついているのが大変ありがたいのです。コストパフォーマンスの点からでも一推し!