新たな経営パラダイムへの示唆
★★★★★
経済や情報のグローバル化など企業を取り巻く環境が大きく変わりつつある中、今後の企業経営のあり方を示唆してくれる一冊
市場の境界の消滅、既存市場の枠を超えた劇的変化、予測不可能な競争相手、新たな消費者意識の台頭などが進む中、コモディティ化する製品は価値を生まなくなり、モノやサービスを単体で提供していては、成長も利益も生み出せない時代になりつつある。
本書の言うところの知識デザインとは「つなげること」、すなわち、ハード、ソフト、サービス、ビジネスモデル、これらすべてを上手に組み合わせ、一つの世界を創り上げることである。
一方、日本企業に欠けているものは、多様な要素、離れた問題、バラバラに存在する知をネットワークし、統合して新たな価値を生む能力とも指摘
アップル社が優れていたのはこのようなブリコラージュの能力だと思う。
これらを踏まえた上で、我々に必要な能力は、「全体を俯瞰する視点」、「世の中の多様な事象や現象、大量の情報や知識の中から、人々を幸せにし、楽しませ、豊かにそして知的にする方法を読み取る能力」、「将来の変化に対する感受性と未来への視点」、「仮説推論的アプローチと経験の重要性」、「消費や生活をデザインする生活哲学を持つこと」である。
そして、これらを創り出すのは、他でもない従業員一人ひとりであり、経営者は彼らに対する敬意と真摯な態度を忘れてはならず、人を軸に置いた経営が重要と説く。
こうした取組みを実践している企業として、ヴァージングループ、サムスン、アップル、カンペール、ディスコなどの事例を挙げている。
これからの経営を考えていく上で、本書は新たな視点を得られるところが多く、読んで損はないと思います。
関連書籍として、「ハイコンセプト」(ダニエル・ピンク)、「花を売らない花売り娘の物語」(権八成樹)、「MBAが会社を滅ぼす」(H.ミンツバーグ)、「イノベーションのジレンマ」(クレイトン・クリステンセン)を紹介しておきます。
創造経済における組織の価値、個人の価値
★★★★☆
小さいながらも組織で働いていて、決定権を持つものと話すタイミングがある自分として、これからの企業のあるべき姿、社会、経済環境、理想的な組織形態に求められているものを学びたくて、購入通読。
通読してみると、これからの社会、経済が求めているものを創造経済と定義してそれに必要な個人としての能力、組織としての能力を定義してくれている。業界ごとに差異はあるだろうが求めていかれるであろう方向としては同意できる。また、「もの」から「こと」へ価値の変換や、それを創造、提供する上での「パタンランゲージ」の重要性など非常におもしろかった。知識の価値、個のネットワークの価値を正面から再定義している感がある。また、個人個人に求められる能力については「センスメーキング力」などを定義してくれているがもう少し詳しく記載することで、ミクロな視点からのリアリティを感じれたのかもしれない。「認知心理学とデザインとの関連」「デザインに求められていること」「QCの限界」「ルールとイノベーションの葛藤」など興味をひかれる私的の多々ある書籍になっている。
これからの時代、社会の価値、組織の価値、個人の価値をどこで見出すべきなのかのヒントが隠されている書籍になっていると思います