一方的過ぎて疲れる
★★☆☆☆
『鏡家サーガシリーズ』の2作目になる作品で,01年12月のノベルスの文庫化.
前作の鏡家三男から本作では次女がメインに,時間は約10年前となっています.
とはいうものの,彼女自身の登場は少なく,それ以外の人物がはじまりから登場し,
物語も彼女のそばで起こるものの,登場の少なさからか少し離れたところという印象.
また,いくつかの物語が並行して進むため,登場人物の把握がだいぶしづらく感じます.
ほかにも物語の動きだしが遅く,上の理由も重なり序盤からスムーズに入っていけません.
ほかにも,特別な能力がキモになっているのに,背景についてはまったく説明がされず,
「能力がある」「能力があるからこうなった」と語られるだけで置いて行かれたようです.
そのため,前作以上にムチャクチャな終盤も,荒唐無稽なだけでまったくついていけません.
コスプレをとおした作品の『テーマ』も,当たり前のことをただ大げさに言っているだけで,
前作以上とも思えるアニメネタの多さも,主人公の妙なテンションもあって疲れてしまいます.
これ以外にも,読み手に語りかけるいわゆる『メタ的』な描写は好みがわかれるでしょうし,
グロテスクや読むに耐えない陰湿さも,本当にそこまで必要だったのか疑問に残るところです.
なお,解説(文庫版のみ)は上野浩平さん,前作のみと語っていたあとがきはやはりありません.