かつて「つまらない大人になりたくない」と歌い、歌ったことに後悔しながらどうけじめをつけるか悩み、そして肉親の死を迎え、いまもなお歌い続ける元春が、自分より幾らか先を歩く先達として「夢」と歌うとき、そこには確かな「夢」が実在していると感じられるのだ。
「昨日従姉のママから/知らせが届いてた/墓参りの準備で/市場に立ち寄った/ありふれた日々/ありふれたブルー」
かつてないほど肩の力を抜いた姿勢ながら、かつてないほどのパワーが感じられて、聞いていて涙があふれそうになってしまう。
正直に言って、このアルバムの中にはシングルチャートNo1になるような
曲はないだろう。でもそれがどうしたというのだ。今の日本の、大量生産され、大量消費され忘れ去られていく音楽よりも、心にいつまでも刻まれ続けているような音楽を聴いていたい、そう思っている方にはぜひ聞いてほしいと思う。