精緻にして誠実な「論理」
★★★★★
◆第7回本格ミステリ大賞
◆第60回日本推理作家協会賞
小説現代増刊「メフィスト」(1998年12月増刊号〜2006年5月増刊号)
に掲載された全23回分の推理小説時評を加筆修正したもの。
毎回、作風の異なる作家による注目すべき新刊書数冊を取り上げ、
対比させつつ、共通点を見出していきながら、そのような影響関係のもとで、
ジャンルや作家がどのように変遷していったかを考察する―というスタイルです。
自らの評論を何らかの「史観」として収束させたり、
推理小説という表現形式の起源を追究したりするのではなく、
あくまで、生れ出でた新たな表現が、それに接した人々に
及ぼす影響について考えていきたい、とする著者。
こうした、一つひとつの作品に真摯に向き合おうとする
著者の姿勢は、個人的にはとても好ましく、頼もしいかぎりです。
▼付記
欲を言えば、取り上げた作品名を目次に記載するか、
一覧できる索引が欲しかったです。