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魅惑のオペラ 29 ベルク:ヴォツェック (小学館DVD BOOK)

価格: ¥3,990
カテゴリ: 単行本
ブランド: 小学館
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21世紀にこそリアルな『ヴォツェック』 ★★★★☆
解説書はどうでもよいと言えばどうでもよいが、見やすい文字の対訳が貴重。
ゲオルク・ビューヒナーの原作が岩波文庫に収録されたことにも快哉を叫んだが、この20世紀オペラの問題作がこのシリーズに入るとは思っていなかっただけに、驚きではある(はて、元は取れるのか?)。

バレンボイムの演奏はCDで何度も聴いたもの。演奏自体はケーゲル盤を一番よく聴いてきたが、バレンボイムのDVDがこういう購入しやすい形で出たことによって、今後はこれが定番になるだろう。格好のベルクオペラ入門になる。
演出は前衛的であるが、奇を衒ったものではない。と言うより、この前衛音楽の正統的演出がどういうものかはいまだ定まっているとは言えないのであって、スタンダードすなわち本ディスクとなる。

演奏自体は細部の隈取がやや曖昧に聴こえるが、それは録音の問題かもしれない。
ブルーノ・マデルナ指揮の映画版が最も鮮明で最もドライで先鋭な感覚を生かした演奏だったと記憶するが、舞台の雰囲気を伝えるバレンボイム盤の価値は変わらない。フォルティッシモの時に耳障りなほどの強烈さは、粗くもあるが、アルバン・ベルクであれば許容範囲だろう。ベートーヴェンやブルックナーとは違うのだから。

歌手では大尉役のグレアム・クラークが、癇症の大尉のいやらしさを見事に演じていて凄みがある。ヴォツェックもマリーも概ね満足できよう。
無調が描きだす精神の荒廃 ★★★★★
 ベルクの音楽は無調といいながらも、荒廃した精神を描きだして雄弁です。貧しさから蝕ばまれていくヴォツェックの精神や、刹那的な性愛を求めながらも罪の意識に脅えるマリーの心情は無調音楽でこその深みがあります。
 ベルクの歌劇『ルル』3幕版を初演したパトリス・シェローの演出は人間中心。
 歌劇『ヴォツェック』にはロルフ・リーバーマン製作、ヨアヒム・ヘス監督のオペラ映画という名盤がありましたし、先ごろNHK教育テレビの芸術劇場で放映したバイエルン州立歌劇場との共同製作の新国立劇場での公演(2009年11月)も興味ある舞台でした。
 この本の解説はベルクの音楽を少しでも理解しやすくとかなり力を入れて執筆されています(船木篤也「解説」,石戸谷結子「あらすじと聴きどころ」,堀内修「思い出の舞台から」)し、全篇の対訳は貴重です。