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大君の通貨―幕末「円ドル」戦争 (文春文庫)

価格: ¥570
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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とても大事なテーマを捉えた ★★★★★
本書は、江戸幕末期を取扱った歴史小説であるにも関わらず、「通貨政策」をテーマとしている点で、現代に通じ、古臭さを感じさせないのが特徴だと思う。

当時の国内の通貨制度は、金本位制であり、二朱銀という兌換通貨を流通させていた点で欧米にも見られない当時最も先進的な面があったという。しかし、欧米の使節はともかく、当の幕閣らも理解できず、結局は外圧によってこの制度は破綻してしまった。

一方で、英国はこの財政面の破綻が幕府の政府維持能力を喪失し薩長ら反政府勢力が台頭すると読み、日本の政治経済に適確に介入していった。

日本は、それまで農本主義の経済社会だったが、開国によって一気に国際貨幣経済の洗礼を浴び、社会が混乱してしまった。

多くの人々は、日本の富国強兵を望み、これによって一時の混乱は回復できる、と考えたのではなかったか?

しかし、本書においては、そのような安直な見方は通用しない。なぜなら、混乱をきたした根本的な理由は、経済実態を無視した通貨政策の誤りにあったからである。…そこを本書は突いている。

現在に至るまで、通貨政策の誤りによると思われる経済混乱を我々はいくつか経験してきている。戦前の金融恐慌であったり、バブルの崩壊であったり、これらはいずれも金融が実態経済と乖離してしまったことによっている。

本書は、そういった問題のさきがけとなった歴史の教訓を私たちに示しているという点で、とても大事なテーマを捉えており、その意味で貴重な作品ではないかと思う。
興味深い内容 ★★★★☆
江戸幕府のちょっと変わった通貨政策を全く理解していない無能な幕府役人
と欲の皮の突っ張ったアメリカ公使と間抜けなイギリス公使がよってたかって
ぶっ壊した結果、明治維新が起きましたというお話。
たしかにこの時期金銀交換レートが日本と海外では違い、その結果日本から
大量に金が流出したということは知っていたのだが、それは日本が知らなかった
のではなく、米英が自分たちの(というか公使の私的)利益のためにそうしたというのがわかる本。
でもこんなこと現代でも日本とアメリカの間でよく起こっているよなあ、と悲しくなることうけあい。
そしていつの時代でも本質をわかっている人は日本では権力を与えられないというのも悲しい。
アジア通貨危機が日本にもあった ★★★★★
アジア通貨危機以降、相場に携わってきたものの、本書に書かれていることを寡聞にして知らなかった。江戸幕府が崩壊した理由は、外圧内圧を始めとして、政治軍事的に語られることが多い。しかし本書はそれを経済的な面から見た奇書である。

間違った交換レートを強要された幕府が、金の流出招く。対抗措置としてとった通貨価値の下落が、ハイパーインフレと社会不安を招き政権を崩壊させる。まるでアングロサクソンの先兵IMFの処方箋を守ったアジアの国々が、通貨の暴落を招き、インフレと社会不安の中で政権を崩壊させていった過程と瓜二つである。

双方のケースとも、欧米のグローバルスタンダートなる論理をアジア諸国が受け入れた故の混乱である。歴史は繰り返すと嘆く前に、私たちは私たちの処方箋を自ら描かなくてはいけないのだろう。再び沈没する前に。

幕末の「マネー敗戦」 ★★★★☆
数年前に「マネー敗戦」という本が話題になった。日本の通貨政策を強烈に批判したものだ。それと同様、それ以上の規模で国富を減少させた為替問題がすでに幕末に起こっていた歴史的事実を明らかにした意欲的な作品である。

欧米の誤った為替相場の主張に抗しきれなくなった江戸幕府は要求を受諾し、200%を超えるインフレと通貨発行益の減少による幕府財政の疲弊を経験した。しかも、幕府側が主張した理論は正しかったにも拘らずである。この件は通貨危機に際してIMFの主張を聞き入れたアジア諸国が未曾有の損失を蒙った経験を彷彿させる。

現在も米国の経常赤字のサステナビリティが疑問視され、ドル安懸念が台頭している。輸出企業やドル資産保有者は気が気ではない。円ドル相場に日本経済が翻弄される歴史は現在も繰り返されている。日本はこれまでも80年代の円高不況、プラザ合意後の円高で煮え湯を飲まされてきた。古くて新しい問題が提示されている作品として読める。