間違った交換レートを強要された幕府が、金の流出招く。対抗措置としてとった通貨価値の下落が、ハイパーインフレと社会不安を招き政権を崩壊させる。まるでアングロサクソンの先兵IMFの処方箋を守ったアジアの国々が、通貨の暴落を招き、インフレと社会不安の中で政権を崩壊させていった過程と瓜二つである。
双方のケースとも、欧米のグローバルスタンダートなる論理をアジア諸国が受け入れた故の混乱である。歴史は繰り返すと嘆く前に、私たちは私たちの処方箋を自ら描かなくてはいけないのだろう。再び沈没する前に。
欧米の誤った為替相場の主張に抗しきれなくなった江戸幕府は要求を受諾し、200%を超えるインフレと通貨発行益の減少による幕府財政の疲弊を経験した。しかも、幕府側が主張した理論は正しかったにも拘らずである。この件は通貨危機に際してIMFの主張を聞き入れたアジア諸国が未曾有の損失を蒙った経験を彷彿させる。
現在も米国の経常赤字のサステナビリティが疑問視され、ドル安懸念が台頭している。輸出企業やドル資産保有者は気が気ではない。円ドル相場に日本経済が翻弄される歴史は現在も繰り返されている。日本はこれまでも80年代の円高不況、プラザ合意後の円高で煮え湯を飲まされてきた。古くて新しい問題が提示されている作品として読める。