心のままに語る
★★★★☆
1984年に朝日カルチャーで行われた講演をもとにした本。同年に光村図書出版から『女たちのロマネスク』として出版されたものの文庫化。
樋口一葉の『にごりえ』、尾崎紅葉の『金色夜叉』、森鴎外の『雁』、有島武郎の『或る女』、谷崎潤一郎の『痴人の愛』、大岡昇平の『武蔵野夫人』の6篇が取り上げられ、それぞれに登場する女たちへの新しい解釈が試みられている。
講演ということもあり、いずれもかなり大胆な仮説が提示されている。従来の説に反対するもの、長年の懸案とされてきた謎に回答を示すもの。なかなか刺激的な一冊となっている。
また、時代性への意識が強く、明治初期、大正、第二次大戦後など、各時期にあらわれた「新しい女」への指摘が行われている。これ自体は目新しいものではないが、わかりやすく、力強い。
20年以上前の本だが、まだまだ生きていると思う。