劇団四季の「李香蘭」にも、川島芳子が登場しますよね。
ただ、上坂冬子さんの文章がいまいちスッキリしないので、
読みにくかった。
本書を読まれる方は、「李香蘭ー私の半生」山口淑子も同時に読まれる
ことをオススメします。
彼女は確かに犠牲者ではある。実際に当時の新聞を紐解いたことがあるが、戦時中は祭り上げて大きく取り上げながら、戦後3年して彼女が銃殺されたことを伝える記事は完全に他人事。同じ新聞とはいえ、何と言う無責任、いや、日本人の無責任さを感じる。よく、歴史に翻弄されるとか、過酷な運命とかいうが、要は無責任なのは彼女を利用した人間にすぎない。
犠牲者である面を強調したいあまりか、少々筆が鈍っている部分もあるが、これは当時入手できる限りの資料と証言を集めた貴重な本だ。
読み終わって印象に残るのは、彼女の作った歌の真摯さや、「あなたの故郷はどこ」と訊かれて答えた幼い芳子の、
「お母様のお腹の中」
という言葉だ。彼女は日中のはざまに捨てられ、まさしくこの子供の頃の答え通りの人生を歩むことになってしまった。彼女に興味をもたれた方には、是非一読して欲しい本。
今まで読んだノンフィクションの中でトップ3にはいる出来です。