ジュリーニ盤では、なんといっても、独唱の4人が素晴らしいですね。リッチャレッリ、ヴァレンティーニ・テッラーニ、ゴンサレス、ライモンディと、20年前の収録当時の「旬」のソリストを集めての演奏ですので悪いはずがありません。ロッシーニらしくとても伸び伸びとした歌唱です。
どこかオペラの雰囲気を漂わしたこの「スターバト・マーテル」は、その劇的な性格ゆえ、宗教曲らしくない「悲しみの聖母」となっていますが、ジュリーニにかかると重厚さがよりました感じがします。名盤の誉れが高いはずですね。
1曲目の「導入唱」と終曲の「アーメン・コーラス」が一番好きです。本当に悲しみの中から、敬虔な気持ちが湧いてくるような音楽がそこには展開されています。
第9曲目の四重唱(ア・カペラコーラス)は、音程に甘さがあり、ハーモニーが時折安定しないのが残念ですが、このフィルハーモニア合唱団は「スターバト・マーテル」を歌うのに相応しい立派な声を持っています。オーケストラに負けていないほど合唱が堂々としています。日本人ではなかなかこのような深みは出せませんねえ。
終曲の「アーメン・コーラス」を聴いていると、その印象をより強く感じました。このフーガの掛け合いは演奏をするのが大変な曲ですが、最後まで乱れず、敬虔な気持ちをこめて、しっかりと歌いきっており、感動を呼び起こします。
終曲(フィナーレ)の指示はアレグロですが、 ジュリーニはけっして走りすぎず落着いた終曲を提示しました。
その破綻のない、高貴なまでに厳かな演奏は、自国の大作曲家「ロッシーニ」に対するジュリーニのレスペクト(尊敬)なのでしょうか。