インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

一族再会 (講談社文芸文庫)

価格: ¥1,365
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
Amazon.co.jpで確認
物質的喪失を越えた豊穣な世界再建の営みがここにある! ★★★★★
江藤淳にとっての失はれた世界回復の営みのドラマを描いたやうな珠玉の一篇であります。この書を私は、二十年以上前の大学時代に読みました。当時の私は、母を亡くした痛手でどうしようもない悲しみに暮れてゐました。そんな私にとってこの書を読む事によって静かな自己回復を遂げる事ができました。最初の章である「母」で、とりわけ印象深いのが幼少にして母を亡くした筆者を描いた情景です。私は何度も涙にくれました。永遠に母と会へなくなってしまった事を十分に理解できない場面には、胸が詰まるやうな感さへしました。そして、小さいながらも自分の世界が喪失した事を自覚し、その事を胸にしまって義母を迎へる筆者の無言の覚悟ある姿もありました。敗戦によって国家を支へた一族の凋落にも似た境遇に際会し、筆者は自分が如何に生きればいいかを求める旅に出ます。父方、母方の祖父、曾祖父の故郷の地(津島、佐賀)を訪ねたのです。それと同時に明治の近代をつくった一族同胞の中にある自己の姿を見つける事となりました。これが江藤淳にとっての内なる「一族再会」でした。尊い豊穣な世界の回復のドラマだったと強く私は実感しました。自らの求道とも言へる営みのドラマの展開は本当に感動的でありました。唯、惜しむらくは「第一部」と銘打たれたその次が永遠に描かれなかった事です。
洗練された「自分探しの旅」 ★★★★★
「妻と私」と並ぶ、江藤淳の最高傑作の一つだと思う。
そこには、澄ました批評では感じることの出来ない、生身の人間の魂の叫びがある。それが、あの明快で真摯な文体で表現されている。それが深い感動を呼び覚ます。

この本の内容を端的に説明すると、筆者が家系を遡って、先人が何をし、何を残したのか、といったことを、現在の筆者との関係において描写したものである。要するに、歴史の流れの中で自己を捉えること、換言すると、いまここで自分が生きることの必然性を見出す作業が行われている。

彼が描くのは、彼を残して逝った者、没落した者、栄華を極めた者、時代を作った者、時代に負けた者、などである。それぞれの物語は、深みがあり、示唆に富んでいて、いずれも興味深い。
しかし、ここでも、通底するのは母に対する喪失感なのである。
他に例を見ない、高い完成度と志を持った「自分探しの旅」ではないかと、個人的には思っている。