この本の内容を端的に説明すると、筆者が家系を遡って、先人が何をし、何を残したのか、といったことを、現在の筆者との関係において描写したものである。要するに、歴史の流れの中で自己を捉えること、換言すると、いまここで自分が生きることの必然性を見出す作業が行われている。
彼が描くのは、彼を残して逝った者、没落した者、栄華を極めた者、時代を作った者、時代に負けた者、などである。それぞれの物語は、深みがあり、示唆に富んでいて、いずれも興味深い。
しかし、ここでも、通底するのは母に対する喪失感なのである。
他に例を見ない、高い完成度と志を持った「自分探しの旅」ではないかと、個人的には思っている。