芝居好き、蕎麦好きな方以外にも、ただし・・・
★★★★☆
本書収録の文章は芝居と蕎麦に関するもので全体の半分ほどを占めている。
読んでみようか、と思っても本書、正直、読者を選ぶ。
「難しい」のである。ただ読むだけでもいくつか障害がある。たとえば、言い回し。本書の著者は明治時代の中ごろの生まれである。つまり、言葉の基礎が文語で確立されているために慣れないうちはなかなか読み進めないかもしれない(文語的な表現がときどき出てくる)。また、話の種を江戸・明治・大正の書物や新聞などからとっているため、文語文に慣れていないか、抵抗があるなら避けたほうがいいかもしれない。それだけではない。難読というほどではないかもしれないが、知識・教養がないと読めない(あるいは困難な)熟語や固有名詞が多い。俳句、川柳、漢詩(こちらには書き下し文、意訳などあり)まで登場する。
私は芝居のほうは正直なところ、半分も分からなかった。それ以外はまあ面白く読むことができた。なかでも「落語千早ふる小考」、これは歌さえ知っていれば笑うことができると思う。
知らないことが多く書かれていて興味深いのだが、誰にでも薦められるものではない。