協力ゲームという失われた可能性の復権
★★★★★
中山幹夫氏による文庫版あとがきで触れられているように、記述の所々で、当初のゲーム理論が現在のような非協力ゲームを指すのではなく、協力ゲームが基本として考えられていたことがわかる。
これは新自由主義(解説だと新古典主義経済)へ迎合したここ半世紀のゲーム理論の風潮に反省を促すものでもあり、長らく入手困難であったゲーム理論の原典である本書に立ち返ることは、この協力ゲームという失われた可能性の復権を促すことになり得る(ちなみに、ノイマンの時代にはゲーム理論が離散数学のひとつであるという意識がなかったために非協力ゲームに対する免疫が発達しなかったのではないだろうか?)。
この最終刊は索引付きで便利だが、簡単な用語集のようなものがあれば初心者にも勧められるのだが、それがないのがもったいない。
あたりまえだが数式が多用されており、平易な記述にも関わらず一般への敷居は高いかも知れない。