【セブン-イレブンで24時間受取りOK・送料0円!】 著者/訳者名:郷原信郎/著 出版社名:講談社 シリーズ名:講談社現代新書 1978 発行年月:2009年02月 関連キーワード:シコウ テイシ シヤカイ ジユンシユ ニ ムシバマレル ニツポン コウダンシヤ ゲンダイ シンシヨ 1978 しこう ていし しやかい じゆんしゆ に むしばまれる につぽん こうだんしや げんだい しんしよ 1978、 コウダンシヤ コウダンシヤ 2253 こうだんしや こうだんしや 2253、 コウダンシヤ コウダンシヤ 2253 こうだんしや こうだんしや 2253 日本の経済と社会を覆う閉塞感の正体。相次ぐ食品企業の「不祥事」、メディアスクラム、年金記録「改ざん」問題、裁判員制度…コンプライアンス問題の第一人者が、あらゆる分野の問題に斬り込み再生への処方箋を示す。 第1章 食の「偽装」「隠蔽」に見る思考停止第2章 「強度偽装」「データ捏造」をめぐる思考停止第3章 市場経済の混乱を招く経済司法の思考
コンプライアンスの新スタンダード
★★★★★
コンプライアンスを理解するための新しいスタンダードである。郷原氏が書かれた内容そのものについては他の方々のレビューが詳しいので割愛するが、おそらく、これからはこの新しいスタンダードを理解している人とそうでない人は同じ土俵で話をすることができなくなるだろう。コンプライアンス・デバイドが始まっている。
そしてこの本をスタンダードとして、もっと本質的な問題が語られていかなくてはならない。
コンプライアンスの中核に潜んでいるのはたぶん大衆と言う名の怪物である。間違いを指摘されるのが嫌いで、複雑な真実を知る努力を面倒がり、簡単で分かりやすいものしか理解したくない大衆に真実を伝えることは難しい。
本書ではメディアの責任が厳しく言われているが、メディアとは言え、やはり資本主義の社会で経営されている会社。果たして大衆が喜ばない真実を伝えられるものなのだろうか? 愚昧な権力者に諫言をするには常に死を覚悟しなくてはならないのだ。
巨大な権力を握ってしまった大衆と本書を読んだ一人ひとりがどうやって戦っていくかが問われている気がする。郷原氏にはその戦いをどうすべきかを是非続編で説いて欲しい。
目の付け所はいいが、「思考停止」というレッテル貼りはやや安易か?
★★★☆☆
コンプライアンスという錦の御旗の下で、マスコミや国民がヒステリックに法令違反を叩く異常現象を分析してます。他のレビューアーさんも書かれていますが、立ち止まって考えるきっかけになる良書だと思いました。
ただ、このような異常現象を「思考停止」という一言で言い切ってしまうことにはやや違和感を感じました。これは、筆者が問題視している無思慮な決め付け(法令違反=悪)と本質的に同じことなのではないでしょうか?
仮に百歩譲って「思考停止」というレッテルを受け入れたとしても、「思考停止」なるものが日本社会にはびこってしまった原因や背景について、ほとんど考察がなされていないのは残念です。紙数の制約から止むをえなかったのかもしれませんが・・・。
参考までに、和田秀樹著の『まじめの崩壊』では、同様の課題に対して、精神医学の観点からアプローチしています。本書と併せて読むと、理解がいっそう深まるのではと思います。
著者の思いが非常によく理解できます
★★★★☆
食品偽装、耐震偽装、さらには年金記録の改ざん問題など「偽装」「隠蔽」「捏造」「改ざん」などのレッテルを貼られると、一切の弁解・反論が許されず、実態の検証もないまま、始まるマスメディアと「人々」によって始まる強烈なバッシング。水戸黄門の印籠のように法令遵守と言われた途端に思考停止してしまう責任ある立場の日本の人々。そのような背景から生じる日本の経済と社会を覆う閉塞感。
それらに対する著者の思いと怒りは非常によく理解できる。特に、不確実性を伴う安全の問題に対する後から批判については、まさしく指摘の通りだと思う。安全への過度の要求はフアッシズムへの道に向かわざるを得ない場合があるという意識を持ちマスメディアは十分注意すべきであろう。
法や規制が水戸黄門の印籠のようになってしまう理由として、米国の法は「文化包丁」のように普段から使いこなすものであるのに対し、日本の法は神棚の中に飾った「伝家の宝刀」のようなものだからであるという意見はまさに卓見であると思う。
ただ、このような問題を解決するための手段として提示されている「印籠をしっかり見る」といったものだけではその解決はなかなか難しいように感じる。著者にはさらなる検討と次の著作を期待するとともに、私たち自身もこの問題の解決の検討を始める必要があると思う。
法令遵守の形式主義や、ダブルスタンダードに悩む方に
★★★★★
マスコミをにぎわした事件やマスコミそのものが、「法令遵守」という印籠の前で「思考停止」に至るメカニズムと、その解決方法を説明してくれる本だ。
ニュースで知られているテーマについて、報道されたこと以外の事実を淡々と語る口調に、感情が入り込む様子がない。理系のレポートというか、法曹出身である客観性というものがそうさせるのかも知れないが、公平無私な、バイアスのかからない文章として、読みやすくて好感が持てる。改めて、それぞれの事件報道と報道されない事実がわかり、自分の理解の浅さやマスコミの表層的な扱いに驚く。
終章の「なぜ思考停止につながるのか」の説明は、アメリカの法制度との違いや、「文化包丁と伝家の宝刀」の喩えがとても分かりやすい。この章だけでも目を通せば、本書への興味と期待が湧くと思う。
ただ、「経済司法」と「裁判員制度」以外では、書かれていることが事実の解釈のひとつでしかないというような、著者が一歩引いているような弱い印象を与える部分があった。先の文章の特徴とは逆のことを要求してしまうが、この分野の専門家であり、権威のある立場だからこそ、全体を断定口調で押し切っても良かったと思う。そうしないと著者の意向とも合わないと思うからだ。
ISO、日本版SOX対応・・・、なんでもいいけど、「体をなして用をなさない」形式だけを揃えて、ダブルスタンダードになってしまうような管理が身近にまかり通っているようなら、ぜひ読むべき本だ。
考えるきっかけにはよい本
★★★★☆
食の偽装、裁判員制度への疑問など、現代社会の中に鬱積する不満や「生きにくさ」を、問題の本質を考えることなく「ルールの遵守」で思考停止してしまっていることに、その原因を求めようとする良著です。
一部、供給者側からのある意味身勝手な視点が垣間見られる部分があるにせよ、「コンプライアンス」という言葉が一人歩きしてしまっている現代日本の中で、ふと立ち止まって考えることを促す一冊です。