その本が読んだ時の衝撃は忘れられない。差別される盲目の琵琶法師たちが、土地を巡り、語ることばが、何故、日本国をイメージさせてしまうのか。平家物語という、日本の「国民的」な古典がどのような政治的な機能によって生み出されてきたのか。これらの問いは重いが、兵藤氏は誠実に丁寧に追い求めていく。
改訂版は、最初の版よりも、視点が広くなっている。足利氏・徳川氏と平曲の関係や源氏物語の宇治十帖などの取り上げられている。
はっきり言って、『想像の共同体』に真似ばかりしている社会史、カルスタの研究をすべて吹き飛ばす爆弾力を持っている。
爆弾と言っても、梶井基次郎の「檸檬」のようなリリカルな爆弾である。