開口節との出会い
★★★★★
一回釣ったら二度と忘れられない。それからこの魚を逃がしてやると、リリースしてやると、その思い出をそのまま家に持って帰ることができる。自分の家の裏庭を、この見事な偉大なキーナイ川が滔々と流れているような気持ちになる。こんなふうな思い出で夜中に酒を飲むことができる。だから、釣った魚は逃がしてやる。ただ、見事なのがかかれば、一匹は持って帰る。
総じて言うて人生は短い。だかきら、「ランプの消えぬ間に生を楽しめよ」
すべては流転する。輪廻転生する。形が変わるだけである。エネルギーは不滅であり、減りもしない、増えもしない。善でもない、悪でもない。古代インド哲学思想を考えたくなる。
かくして、魚の命は終った。釣り人もやがては死ぬ。しかし、川は眠らない。これが本書の
テーマである。